「検診車」と「健診車」は何が違う? 知られざる“移動式クリニック”の世界

街中や職場で見かける検診車・健診車。読み方は同じでも、その役割や搭載する医療機器には明確な違いがある。さらに、巨大な車体と精密機器を安全に運ぶドライバーには、繊細な運転技術と設営の職人技も求められている。

市民やサラリーマンの体調管理を影で支える存在として、街中や職場の駐車場で見かける「特装車」がある。一般的にはレントゲン車や胃胸部検診車と呼ばれるこれらの車両は、法律上「医療防疫車」というカテゴリーに分類される。病院外での巡回診断や、治療を可能にする移動式クリニックともいえる存在だ。しかし、この車両には「検診車」と「健診車」という、一見すると区別がつきにくい二つのジャンルが存在する。両車には、どのような違いがあるのであろうか。

「検診」と「健診」は目的も搭載設備も違う

どちらも読み方は同じ「けんしんしゃ」だが、その役割は明確に異なっている。「検診」とは、特定の病気を早期に発見し、早期治療へつなげるための高度な検査を指す。代表的なものががん検診だ。そのため「検診車」には、胸部や胃部のX線装置、あるいは乳房X線(マンモグラフィ)や子宮がん検診設備、さらにはCTやMRIといった高額かつ大型の精密医療機器が搭載される。

一方で、「健診」は「健康診断」の略。からだ全体の健康状態を確認して、病気を未然に防ぐ「予防」が主な目的となる。したがって「健診車」は、胸部レントゲンや心電図をはじめ、視力・聴力・血圧・採血や腹部超音波や眼底検査など、一台で多くの項目をこなせる多目的室のようなパッケージングが特徴だ。

受診者の負担を減らす「優しい移動空間」へ進化

これらの車両がもたらす最大のメリットは、受診者の圧倒的な時間短縮と利便性である。わざわざ半日かけて総合病院などに足を運ぶ必要がなく、職場の敷地内や地域の集会所などに車両が来ることで、業務や日常生活の合間にスムーズに検査・診断などを受けられるのだ。また、近年では受診者の精神的・身体的ストレスを緩和するための設計思想も、随所に盛り込まれているという。

たとえば、限られた車内空間で効率よく受診者が流れるように、計算された動線設計が行われているなどといったことだ。また、冬場の車内の冷え込みを防ぐ効率的な空調システムのほか、プライバシーを守るために遮音性の高いパーティション、車椅子対応の昇降リフトの装備など、医療防疫車は「優しい移動空間」へと進化を遂げているのである。

巨大な車体と精密機器を守るドライバーの「職人技」

しかし、どれほど優れた車両であってもそれを目的地へ安全に運び、現場で機能させられなければ意味がない。ここに、検診車・健診車を走らせるドライバーたちの「職人技」が存在するのだ。これらの車両の多くは、超重量級の医療機器を積載している関係上、大型トラックやマイクロバス、さらには全長10mを超えるトレーラーがベースとなっている。運転には車両に応じて大型免許や牽引免許が必要になるが、単に巨大なクルマを動かせるというだけでは務まらないのだ。

最大の課題は、車内にある高価な「精密医療機器」を衝撃から守ること。そこで、ドライバーには路面の段差や急ブレーキを徹底的に避ける繊細なペダルワークを求められる。さらに、現地に到着してからの「設営」も重要な任務だ。傾いた場所に駐車すれば、医療機器の測定精度に狂いが生じたり、受診者が車内でバランスを崩したりする恐れがある。そのため、油圧ジャッキを㎜単位で調整して車両を完全に水平に保つ「レベリング」など、現場ごとの臨機応変な工夫をしなければならない。

現在、人々の健康意識の高まりを受けて検診車・健診車ドライバーの求人は、数多く存在する。中古市場での流通やレンタル需要も活発であり、その運行を担うプロとしての活躍の場は広い。大型免許などを活かし、安全運転と高度な設営技術によって地域社会の健康を支えるという仕事は、自動車を愛する者にとっても非常に誇り高く、挑戦しがいのあるステージだといっても過言ではないだろう。

▼合わせて読みたい

PHOTO GALLERY

ページトップに戻る