街で存在感を増している連節バスは、見た目こそトレーラーに似ているが法的な扱いは異なる。高額な導入費や運用の難しさを抱えながらも、高い輸送力や運転手不足への対応、街のPR効果から普及が進んでいる。
見た目はトレーラーでも構造と法律は別物

都市部を中心に、見かける機会が格段に増えた連節バス。その長くダイナミックな車体は、高速道路を走るフルトレーラーを彷彿とさせる。ちょっと見には、「巨大な連結トラックのバス版」という印象を受けるかもしれない。しかし、その構造や法的な位置づけには明確な違いが存在するのだ。
一般的にフルトレーラーは牽引免許が必須だが、連節バスは幌で接続された「単一の構造物」とみなされるため、法律上の扱いとしては牽引免許を持つ必要がない。とはいえ、曲がり角における内輪差や後退時に見られる独特の動きなど、運転に必要なスキルはトレーラーと大差がないのだ。そのため現場では、安全確保の観点から牽引免許の保有者を優先的に配置するところが多いという。
日本の道路運送車両法や道路法では、車両の全長は12m、軸重は10tまでに規制されている。一般的なフルトレーラーはこの制限内に収まるが、連節バスの多くはこの規格を超える。そこで、1985年の「つくば万博」では特例を設けて運行を行い、2014年には国土交通省が導入基準のルール化に着手した。これを受けて、輸送力の最適化を目指す自治体や路線バス事業者が、本格的な普及に本腰を入れ始めたのである。
高額でも導入が進む大きな理由

とはいうものの、導入のハードルは決して低いものではない。なのに、それを越えてでも走らせようとする動きがなぜ加速しているのか。その理由は、「1名の運転手で、従来の1.5倍の乗客を運べる」といった高い輸送効率にある。インバウンドなどで、局所的に需要が増加した都市部において、慢性的な運転手不足を解消する1つの手段として、期待されているのだ。
コスト面の負担は大きい。通常の路線バスが新車1台あたり2500万円前後であるのに対し、輸入や国産ハイブリッドの連節バスの価格は5000万〜8000万円ぐらいになる。さらに、車体が長いためバス停の切り欠き工事やターミナルの大規模な改修も不可欠であり、初期投資の回収は容易なことではない。それでも導入が進む背景には、現場の苦労と引き換えに得られるメリットだけではなく、イメージアップにもつながっていくからだ。
乗客には魅力、運行側には大きな苦労

利用者にとって、連節バスに乗る体験は単なる移動手段を超えたエンターテーメントだ。最も人気があるのは、車体を繋ぐ幌の「関節部分」付近の席である。カーブを曲がる際、目の前で床と壁がぐにゃりと回転する臨場感は、テーマパークのアトラクションにも等しい。また、車内が見渡せる最後部からの広々とした眺望も人気だ。
一方で、運転手や運行管理者にかかる精神的・肉体的負担は大きい。運転手の場合、狭い交差点における右左折時には、常に神経を研ぎ澄まして車体後方の安全確認に注力する必要がある。運行管理者は専用バス停の確保やダイヤ調整のほか、アクシデントに対応するバックアップ体制の構築など、裏方としての苦労が絶えないのだ。
このように、莫大な費用と運用の壁を乗り越えて走る連節バスは、地域のインフラを支える強い味方であると同時に、街のアイコンとして圧倒的な存在感を放っている。話題性抜群の「走る広告塔」として、今後も新たな観光需要や輸送システム技術を、切り拓く存在であり続けるだろう。
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