ブレーキが効かない!山道の「緊急退避所」とは

山道で見かける「緊急退避所」は、ブレーキが効かなくなった車両を強制的に停止させる施設だ。上り坂と砂利の抵抗を利用し、大型車の暴走を防ぐ最後の安全装置となっている。

ブレーキが効かない車両を救う「最後の砦」

長く険しい峠道を下っている最中、路肩に現れる「緊急退避所」の看板と、ジャンプ台のような上り坂や砂利が敷き詰められた謎のスペース。山道を走ることのあるドライバーなら、一度は目にしたことがあるのではないだろうか。これは、万一ブレーキが効かなくなった車両が突っ込んで強制的に停止するための「最後の砦」なのである。

そもそも、なぜこんな施設が作られたのであろうか。箱根新道や北海道の日勝峠など急勾配が延々と続く下り坂では、フットブレーキを酷使することで「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が発生しやすい。とくに何十tもの荷物を背負う大型トラックの場合、一度ブレーキが効かなくなるとその巨体は止められない凶器と化して大惨事を招きかねない。

こうした急勾配の道路が開通した昭和の頃は、現在よりも車両のブレーキ性能が低いためにノーブレーキ状態に陥る暴走事故が多発。そこで、緊急事態に陥った車両を安全かつ確実に止めるためのストッパーとして、考案・設置されたのが始まりとされている。近年は排気ブレーキやリターダなどトラックの補助ブレーキが著しく進化し、昔ほど使われる機会は減ったものの、今でも危険の多い重要路線には残されているのだ。

上り坂と砂利で車両を強制的に停止

緊急退避所の構造は、極めてシンプルかつ合理的。基本的には道路脇から分岐する形で、急な「上り勾配」が設けられているといったもの。そして路面には、砂や細かい砕石(砂利)が数十cmの厚さでフカフカに敷き詰められている。

車両がここに突っ込むと、まず上り坂の重力によって速度が落ちる。それと同時に厚く敷かれた砂利にタイヤが深く沈み込み、凄まじい走行抵抗(前へ進むのを邪魔する力)が生まれるのだ。物理法則を巧みに利用して運動エネルギーを吸収し、ドライバーや積み荷に対する衝撃を最小限に抑えながら確実に停止させる。車速がどんどん上がっていく絶望的な状況下で、車両を柔らかく受け止めるために特別な設計が施されているのだ。

「本当にあんな砂利の坂で大型トラックが止まるのか?」と疑問に思う人も、いるかもしれない。しかし、その効果は実証済みだ。

2004年に北海道の国道274号・日勝峠で行われた実証実験では、50km/hで走行する5tクラスのトラックやトレーラー(空荷・満載)を緊急退避所に突入させている。その結果、敷き詰められた砂利の制動路盤内で安全に停止できることが確認された。その効果は絶大で、まさにドライバーの命を救う最後の砦といってよい。

看板を見たら危険な下り坂のサイン

設置される場所は、必然的に「長く急な下り坂が連続し、重大事故のリスクが高い箇所」だ。法的に細かい設置基準が全国一律にあるわけではないが、過去に暴走事故が多発した場所やトラックの通行割合の高い急勾配区間を管理する国や道路会社が、安全対策として設置しているケースが多い。

「この先緊急退避所あり」の看板を見かけたら、それは「過去にブレーキトラブルが起きた危険な下り坂」という道路からのメッセージ。エンジンブレーキやリターダを適切に駆使しながら、気を引き締めて通行するように心がけたいものだ。

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