宮城多賀城・塩竈〜山形鶴岡・酒田往復360km!豪雪の奥羽山脈、中羽前街道の峠を越え魚のアラを運ぶ水産ダンプを追う【後編】

全国各地の流通を支えるトラックドライバーたち。そんなプロフェッショナルの現場を追跡! このコンテンツでは極寒の2月下旬の宮城県から山形県へ向かい、同県内の魚市場で廃棄された魚の「アラ」を集荷して再び宮城へ戻るという、東北の太平洋岸と日本海岸を往復する航海に密着。その後編をリポート。

前編では東北の有名車「多賀丸」と、そのオーナーで宮城県多賀城市にて運送会社「多賀商店」を営む馬場真矢さんが愛機レンジャープロを駆り、夜明け前に同市から中羽前街道こと国道347号線を抜け、山形県は鶴岡市の魚市場で魚のアラを集荷したところまでお伝えした。ちなみに前回のおさらいになるが、アラとは魚を2枚・3枚おろしにした後に残る頭・中骨・かま(頭の下のエラからヒレにあたる部分)・尾などのこと。実は魚が刺し身や切り身として役に立つ部分はその魚体全体の40%で、残りの60%がアラになる。この部分は調理しにくく食べにくいところではあるが、栄養価は非常に高い。「アラ汁」という濃厚なダシのとれた魚料理は、まさにこのアラが主役だ。

山形県鶴岡市を出た「多賀丸」と馬場さんが次の集荷先の同県酒田市に入ったのは午前10時20分頃。酒田港に面した魚市場に到着し、アラの積み込み場に愛機を駐めた。馬場さんは多賀丸から降り、シャシーに備え付けられたハシゴを取り出し、ボディのアオリにセット。その後積み込み場に隣接した冷蔵庫にダンベで保管されていた魚のアラをフォークリフトで取り出し、多賀丸のダンプボディにまずリアから落とし込むように積み込んだ。またボディ内にアラを均等に積むため、サイドのアオリからも積み込み作業を行なった。

10時50分頃に積み込みは完了。アオリやリアのケツブタに付いたアラやその汁をきれいに洗い流し、市場を後にした多賀丸は、余目酒田道路こと国道47号線を西方向に駆け、復路についた。同国道に入った頃には雪はやみ晴天になっていたが、最上川沿いの山岳エリアに入ると再び降雪。沿道も雪深くなっていた。

11時50分頃に最上郡戸沢村の「芭蕉ドライブイン」に到着。彼の地で「奥の細道」で名高い俳聖・松尾芭蕉が「五月雨をあつめて早し最上川」の名句を詠んだ故事にちなみ名がついたドライブインで、馬場さんは名物メニューのもつに定食を選びランチを楽しんだ。現在この芭蕉ドライブインは、2024年7月の大雨災害の影響で、残念ながら現在は営業していない。

昼食を終え、新庄ICから東北中央自動車道に入り南下。尾花沢ICを下車し、「中羽前街道」こと国道347号線に入ると辺りは完全な銀世界。往路より雪は更に降り積もり、前方の視界も見づらくなっていた。道中ではUD久遠ベースの除雪車ともスライドした。「前編」でもお伝えしたが、この国道の「鍋越峠」は山形県と宮城県を結ぶ道の難所のひとつで、12月から3月までは夜間は通行止めになっている。

鍋越峠を越え山を降り、仙台近郊に入ると先程までの豪雪が嘘のような晴天に。大和ICから東北自動車道に入り、仙台北部道路と仙台松島道路を経て利府中ICを下車。15時15分頃に塩竈市に入り、納品先のフィッシュミール工場に到着。台貫に乗って積み荷の測定を受けた後、工場内に入りダンプアップでアラを荷降ろしした。降ろされたアラはダンプの後ろに備えられたホッパーという装置で集められた。

納品を終えた馬場さんは工場の洗車エリアで多賀丸のボディやキャブ、シャシー、足回りなどを隅々まで洗車。取材日は2月下旬で気温は氷点下だったが、馬場さんは愛機をいたわるように丁寧に洗っていた。「特にマフラーはしっかり洗わないと汚れがとれなくなるんですよ」。寒さよりも勝る愛機への愛情を感じた。

馬場さんが山形県内で集荷し、フィッシュミール工場に納品した魚のアラは、工場内の機械で蒸煮・圧搾という工程を経て固形分と液分に分けられ、さらに固形分は乾燥、冷却、粉砕されフィッシュミールとなり、液分は魚油とその他の液体に分離され、後者は濃縮のうえ固形物に添加される。こうして完成したフィッシュミールは飼料や肥料の原料として活用され、魚油はマーガリンやショートニングの原料や養殖魚の飼料、さらに近年では化粧品や健康食品の素材としても利用されている。

馬場さんと氏の率いる多賀商店は、市場や鮮魚店で大量に廃棄された魚のアラを完全利用するこの100%リサイクルのフィッシュミール生産に40 年以上も前から関わってきた。馬場さんは、近年では「サスティナブル」「SDGs」といった名称でもてはやされているこの事業の一翼を担ってきた先駆者といっても褒め過ぎではないだろう。

※「トラック魂」VOL108-109(2022年5〜6月発売)の人気連載「トラッカー24時」の再編集したものです。

PHOTO GALLERY

ページトップに戻る