一般人は入ることができない扇島の秘密 海底トンネルと再開発の現在

川崎と横浜の境にありながら、一般人は自由に入れない人工島・扇島。海底トンネルの先には何があるのか。製鉄所の歴史と立入制限、再開発で動き始めた“閉ざされた島”の現在が見えてくる。

一般人が自由に入れない人工島「扇島」

多くの倉庫が立ち並ぶ港湾エリア。そこには日夜、数えきれないほどのトラックが出入りし、日本の物流を支えている。港湾エリアのなかには公園など、一般の人が利用できる場所もある。

そんななかで、限られた関係者しか自由に立ち入ることのできない人工島がある。それが神奈川県の「扇島」だ。

扇島は川崎市と横浜市にまたがる人工島で、日本鋼管(現JFEスチール)が京浜地区の製鉄拠点として開発を進めた。

1971年には扇島の建設工事が始まり、日本鋼管による埋め立ては1975年まで行われた。その後、1976年には第1高炉が火入れされ、扇島で本格的な製鉄所の操業が始まっている。

扇島への移転には、川崎・横浜地区に分散していた製鉄設備を集約して生産性を高めるとともに、環境対策を進めるという狙いもあった。

扇島へ続くのは海底トンネルと扇島大橋

そうして出来上がった人工島の扇島だが、現在も一般車が自由に利用できる公道から直接アクセスすることはできない。

一般の人が扇島の区域を通過できる場所としては首都高速湾岸線がある。地図を見ると分かるように、首都高速湾岸線は扇島を横断しているものの、現在は島内へ出入りするための一般車向け出入口はない。

また、国道357号も現在は東扇島までとなっており、一般道からそのまま扇島へ渡ることはできない。

では、関係者はどうやって扇島へアクセスしているのだろうか。

現在の陸路は、JFEスチールが管理する構内道路だ。

川崎市川崎区水江町にある「JFE扇島正門」から入り、まず「JFE海底トンネル」で水江町から東扇島へ渡る。そこからさらに「扇島大橋」を通り、ようやく扇島へ到達する。

つまり、扇島へのアクセスは海底トンネルだけではなく、海底トンネルと扇島大橋を組み合わせた非常に特殊なルートとなっている。

これらは一般車が自由に通行できる道路ではなく、JFEの構内道路であるため、関係者や許可を受けた車両などに利用が限られている。

港湾施設にはSOLAS条約による制限区域もある

扇島には、私有地やJFEの構内であることとは別に、立ち入りが厳しく管理されている場所もある。

国際航海船舶が利用する一定の港湾施設では、SOLAS条約に対応した国内の保安制度に基づき、岸壁などに制限区域が設けられている。

こうした制限区域では、フェンスやゲートなどが設置され、人や車両の出入りが管理されている。

SOLAS条約とは「海上における人命の安全のための国際条約」のことで、その原点となった条約は1912年のタイタニック号沈没事故を契機として1914年に採択された。

ただし、扇島全体がSOLAS条約によって立入禁止になっているという意味ではない。

扇島にはJFEの構内であることによる入構管理と、港湾施設の制限区域における保安上の立入管理が存在しているというわけだ。

“閉ざされた島”は2028年度へ向けて動き始めた

ちょっと謎めいた存在でもある扇島だが、現在は大きな転換期を迎えている。

JFEスチールは2023年に東日本製鉄所京浜地区の高炉など一部設備を休止。これに伴い、扇島では大規模な土地利用転換が進められている。

川崎市は2026年2月に「扇島地区基盤整備等推進計画」を策定し、2028年度からの先導エリアの一部土地利用開始を目指している。

アクセスについても、国道357号を東扇島から扇島へ延ばす橋梁や島内道路、首都高速湾岸線の扇島出入口など、新たな交通インフラの整備が計画されている。

さらに2026年8月には、JFEスチールと日本GLPが扇島の約18ヘクタールについて土地売買契約を締結。冷凍・冷蔵機能を中心とした大規模な次世代物流施設の整備計画も動き始めた。

これまで関係者以外にはほとんど縁のなかった“閉ざされた島”は、物流やエネルギーなどの新しい拠点へ向け、少しずつ姿を変えようとしている。
扇島を眺めるなら東扇島西公園

それでも現在の扇島を少しでも近くから見てみたいというなら、隣の東扇島にある「東扇島西公園」を訪れるのもいい。

一般に利用できる公園で、海越しではあるものの扇島の工場群を眺めることができる。

今後、大規模な土地利用転換によって景色そのものが変わっていく可能性もある。現在の扇島の姿を眺められる場所として、一度訪れてみるのも面白いだろう。

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