
ビルやマンションの建設現場や道路工事の現場でよく見かけるミキサー車。コンクリートを運んでいることは知っていても、その構造や運搬に関するルールはあまり知られていません。そこで、今回はミキサー車に注目してみました。
ミキサー車とは、荷台に大きなドラムを備えているトラックのことで正式名称は「レディミクスト車」ですが、生コン車、ミキサー車と呼ばれることがほとんどでしょう。このミキサー車は、後部に設置された円筒状のドラムを回転させながら走行するのが特徴です。
そして、ドラムが常に回転しているのは、固まりやすい生コンクリートの品質が落ちないよう、攪拌しているためです。こうしたドラム部分を含め、ミキサー車は主に「ドラム」「ホッパー」「スクープ」「シュート」「水タンク」「レバー」と呼ばれる部分で構成されています。

ドラム
荷台部分にある、生コンクリートを詰め込む円筒型の容器で。走行中もゆっくりと回転し続けます。ドラムの回転方向は場面に応じて変わり、生コンを積むときは反時計(左)回り、下ろすときは時計(右)回りに回転します。この仕組みにより、効率的な積み込みと排出が可能です。
ホッパー
生コンクリートをドラムに投入する際の投入口です。ミキサー車の後端上部にあり、輸送時は生コンクリートの品質が落ちないようにカバーをかけます。
スクープ
ホッパーの真下にあり、じょうごのようにドラムから投入した生コンクリートを集めます。
スクープはフローガイドとも呼ばれます。
シュート
スクープの下部にあるのがシュートで、スクープから流れ出た生コンクリートはシュートを経由することで、生コンクリートを決められた位置に流し込むことができます。シュートは上下左右に動かすことができるため、排出方向を調整できます。
水タンク
ドラムの前方にある水タンクの容量は車輌のサイズによって異なりますが、小型車で約100リットル、大型車で約200リットルあります。コンクリートの水分調整や生コンクリートを降ろした後のドラム内部やホッパー、シュートを洗浄するための水を貯蔵しています。
レバー
ドラムの回転する方向や速度を調整する際は、運転席や車輌後部にあるレバーで操作します。車輌の後部左右やホッパー付近、運転席などに設置され、レバーを車輌前方に向けて傾けると正転し、後方に傾けると逆回転します。また、レバーの傾きが小さいとドラムはゆっくり回転し、大きく傾けると速く回転します。

すぐに固まってしまう生コンクリートは扱いが難しく、輸送中に固まってしまってしまうのは厳禁です。そのため生コンの輸送は時間との勝負となるため、生コン工場から現場までの輸送時間は90分が目安となるのです。この90分と言う時間は日本工業規格(JIS)が「生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し現場に到着するまでの時間とし、その時間は1.5時間以内とする」と定められているのが理由です。
あまり走行速度が高くないように見えるミキサー車ですが、この90分を守るためには、細かな運行スケジュールのもと、つねに時間と戦っているのです。
