
暑い夏、寒い冬にはなくてはならないエアコン。その仕組みは冷媒ガスを凝縮・膨張させることで、周りに熱を放出したり、周りから熱を奪ったりして温度を調節するというものだ。凝縮・膨張させる冷媒ガスはコンプレッサーで循環させるのだが、家庭用の場合はその動力に電気を使用する。「エアコンを使うと電気代がかかる」といわれるゆえんである。
トラックなど内燃機関を持つ車輌の場合、エアコンのコンプレッサーはエンジンの回転からベルトで動力を得る。すなわち、エンジンが止まればエアコンも止まってしまうわけだ。地球温暖化で夏の日中気温が30℃台後半になるような季節、夜だからといって気温が一気に下がるということはほとんどない。そのようななかで、エンジンを切ってエアコンをつけない状態だと、ドライバーは熱中症になりかねない危険にさらされてしまう。
しかし、化石燃料の高騰や厳しい運送料金が続くなか、仮眠中にエンジンをかけるのを後ろめたく感じてしまうことも。加えてCO2・NOx・SOxなどを含んだ排気ガスの排出は環境にもよくない。そこで、導入が進みつつあるのが電気式冷房機である。これは、家庭用と同様にコンプレッサーの動力を電気で賄おうというものだ。先にも触れたように、エアコンを電気で動かすには多くの電力を供給しなければならない。しかし、トラックはキャビン内を冷やせばよいのだから、意外と小さな出力で済む。


電気は基本的に、車載されている12Vあるいは24Vの鉛バッテリーから供給される。これは主に始動時に使用されており、ディーゼル車輌に搭載されているものは相応の容量を持っている。エンジンが動いている間は、ベルトを介してオルタネーターが回転することで充電が行われる。バッテリーに異常がなく機関が正常であれば、ある程度走行すれば十分な充電が可能となる仕組みになっているのだ。
とはいえ、他の車載電気機器に比べれば消費電力は少なくない。そのため、「ナイトモード」「エコモード」といった設定が可能になっており、消費電力を抑えることができるのだ。これなら、エンジンをかけなくてもエアコンを使用することができて、快適な休憩時間を過ごすことができるだろう。

寒い日に不可欠な暖房は、廃熱利用という車輌特有のエコなシステムが採用されている。すなわち、エアコンを利用したものではないのだ。エンジンが稼働した際に摩擦によって発生する熱を冷ますため、その内部には冷却水が循環している。この熱くなった冷却水をキャビン内に引き込み、ブロアによって暖かい空気を循環させているわけだ。しかし、このシステムもエンジンの稼働が必須条件になる。
そこで、燃焼ヒーター式の暖房が採用され始めているのである。これは暖房システムを独立させて独自に化石燃料を燃焼させるという、いわば石油ファンヒーターの小型版のようなもの。化石燃料を使用するものの、完全燃焼するように設計されているので、エンジンをかけ続けるよりは燃費にも環境にも優しい。トラックはわが国の物流に不可欠な車輌であるだけに、環境負荷が小さくドライバーに優しいアイテムに、高い需要があるということなのである。