傍で見るより難しい大型車輌の運転

大型車輌といってまず思い浮かぶのは、大型トラックやトレーラーであろう。これらは、門外漢から見るといずれも「大きなクルマ」という程度の認識かもしれないが、それぞれに独自の特性があって運転する際の注意点も異なってくる。こういった車輌の運行に従事するドライバーは、それぞれの特徴を熟知して日々の安全運転に気を配っているのだ。

トラックは架装によって外観に違いがあるものの、大型ならポピュラーなのは箱車であろう。トレーラーも、同様に長方形の箱型が一般的といえる。車輌によってその大きさは異なるものの、単独なら道路法上の一般的制限値が全長12m・全幅2.5m・全高3.8m(高さ指定道路は4.1m)であるから、これに近い寸法のものもあるということだ。これだけの大きさがあって後部に多くの荷物を積んでいると、運転席から見える範囲が乗用車に比べてたいへん狭くなる。すなわち、死角が非常に多いということである。

これをカバーするために多くのミラーが付いているのだが、それですべてが見えているわけではない。特にサイドミラーはコンパクトにしてミラーによる死角をおさえながら映る範囲を広くする必要があるので、一般に凸型ミラーが採用されている。そのため、映る画像に歪みが生じることになり、正確な距離感を掴むのが簡単ではない。たとえば、左後方からくる歩行者・自転車・バイクなどといった、小さな対象物を確認するのは決して簡単なことではないのである。

なかでもトレーラーは、トレーラーヘッドとトレーラーの間に連結器があってそこが折れ曲がる構造になっている。すなわち、鋭角に曲がろうとするときなどには車体が「く」の字になるのだが、その際には目視はもちろんのこと、ミラーを使っても後方確認ができない状態になるのだ。しかも、大型トラックには後方確認カメラが普及しているが、トレーラーではほとんど装着している車輌がない。道路交通法上ではドライバーに安全確認義務があるとはいうものの、こういった特性を踏まえて歩行者や自転車などの交通弱者側も注意をする必要があるといえよう。

また、大型トラックやトラクタは運転席が高い位置にある。そのため、キャビン周りの低い場所を目視するのは、非常に難しいとされているのだ。さらに、右左折をするときはよく巻き込みに注意が必要だといわれるが、同様に後方の膨らみにも気をつけなくてはならない。車輌が右左折をするためにハンドルを切ると、基本的に後輪を軸として回転運動が行われる。このときの内輪差が大きいことで、巻き込みが起こりやすくなる。

これに対して後方の膨らみは、後輪から車輌後端まで(リアオーバーハング)が長いという、大型車輌が持つ独特の事情で発生するのだ。たとえば左折をする場合、後輪は車線内ギリギリで方向を変えたとしても、後輪から大きく後ろにはみ出した部分は、左折に伴って隣接車線に被ってしまうのだ。もしこのとき、隣接車線に当該車輌を追い抜こうとする車輌がいれば接触する危険性が生まれる。トラックドライバーは常に巻き込みと膨らみを瞬時に判断し、最も危険の少ないコースを選択しているのだ。道路は共有物である。利用者すべてが互いに注意を払い合うことで、安全が確保できるのではないだろうか。

ページトップに戻る