進化する大型車用洗車機の最新事情

洗車機といえばガソリンスタンドなどでよく見かけるが、これは乗用車を対象とした業務用に作られたもので、利用したことのある人も多いのではないだろうか。以前は、洗車の際に使用されるブラシがクルマの塗装によくないなどといわれていたが、現在はスポンジブラシなどが開発されて、そういった懸念も少なくなってきているという。

今でも自ら手洗い洗車をする人はいるが、都市部では洗車場所の確保ができなくなっている。立体駐車場や共同駐車場では、洗車をする場所がほとんど用意されていない。自宅駐車場でも隣家の迷惑にならない範囲でないと難しく、路上で行なえば苦情が来ることもあるようだ。乗用車の洗車事情は厳しくなる一方なので洗車機だけではなく、洗車場やコーティングの利用者が増えるのも頷けよう。

トラックやバスなどの大型車は基本的に業務用車輌なので、大手事業者のなかには洗車機を導入しているところがある。とくにバス会社は、営業所ごとに機械を置いている会社もあるようだ。中小の運送事業者では、今でもドライバーが自らの相棒を手洗いしていることが多い。大きなトラックを洗うのは手間をとられるが、磨けばそれだけきれいになるので、必ずしも嫌悪されているというわけではないらしい。

とはいえ、2024年問題をきっかけにトラックドライバーの不足は深刻化しており、直接輸送に関わる業務以外に時間を割ける状況ではなくなっている。そうなると、洗車はやはり機械に任せるのが合理的。問題は、コストである。そこで注目されているのが、2024年にパシフィコ横浜で開催された「ジャパントラックショー2024」に出展していたヒラマツ社の1本ブラシ洗車機「ロボ洗」だ。

実はこの機械、今回が初号機というわけではない。50年ほど前に前身となる「ポートワッシャー」が登場しており、1996年には初代「ロボ洗」に進化しているのだ。すなわち、すでに多くのノウハウを持つロングセラー洗車機なのである。今回出展されたのは、いわばその集大成ともいえるフルモデルチェンジ版だ。

機械の動力は、電気モーターとディーゼルエンジンの2種類。通常、洗車機といえば電気モーター式が多いが、トラック駐車場には電源確保の難しいところも少なくないのだ。洗車に使用する水は、あらかじめ360ℓ入りのタンクに注水しておけばよい。洗車するときには水を出しながらブラシを回転させ、車輌に沿って1周走らせるだけだから簡単だ。この操作は、リモコンで行なう。

このように説明すれば突っ込みどころが満載のように感じるかもしれないが、実はトラックの洗車はこの方法が意外と合理的なのだ。本来なら、乗用車用の洗車機のように車輌をセンサーでチェックすれば、自動で洗車を行なえる。そうすれば、リモコンを操作する人が必要なく、スイッチひとつで自動洗車ができるはずだ。

しかし、トラックはバスや乗用車ほどサイズ・形状・付属物などが一定していないため、あらかじめプログラミングをしたりセンサーで感知したりする必要がある。これでは返って無駄が多くて不合理なだけではなく、機械のコストアップにつながるのだ。本機の価格は約500万円。しかし、水量が少ないので水道代が最大約120万円節約できる。すなわち、5年足らずで償却が可能ということだ。手洗い洗車の良さを否定するものではないが、ドライバー不足や運送事業者の懐具合を考えれば、こういった洗車機の導入も選択肢のひとつといえるのではないだろうか。

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