
近年、自動運転の話題はさまざまなところで盛んだが、一部で「自動物流道路(Autoflow Road)」建設計画といったものがささやかれている。自動運転は現状の道路に、ドライバーのいない車輌を走らせようという技術。これに対して「自動物流道路」は、道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンなエネルギーを動力源とする運搬機器で、無人化・自動化された輸送手段により、貨物を運ぶ新たな物流システムのことだ。専用道路で自動運転を行う仕組みなのだから、お台場を走る新都市交通「ゆりかもめ」の物流版といったところであろうか。
その目的は、「物流の2024年問題」のような物流危機や、カーボンニュートラルの実現といった、社会の変化に対応することにある。自動運転は基本的に公道での活用を前提にしているので、ドライバーがいない以外は現状のトラック輸送と大きくは変わらない。しかし、「自動物流道路」は専用道路なので以下のような運用ができるのだ。
①物流の完全自動化
輸送だけではなく、物流拠点における荷積み・荷降ろしを自動化。専用道路・専用輸送機器で現場に人が介在しないため、少ないスペースでシステムを構築でき、24時間365日安定的な輸送を実現できる。
②専用道路上で荷物の保管や時間調整が可能
物流需要が集中する夜間を避け、日中に自動物流道路に荷物を運び込み、バッファリング(保管)レーンで待機したり時間調整したりすることができるので、需要の平準化による物流の効率化を実現できる。
③他の輸送モードと連携が可能
道路ネットワークの強みを生かし、短距離から長距離の小口・多頻度輸送に対応。トラック・鉄道・船・航空機のネットワークと連携・補完することで、モーダルシフトの推進ができる。
まさに夢のような計画ではあるが、実現までの道程は遠い。2025年度に「自動物流道路」の官民協議会を立ち上げて、実現に向けた具体的な方法や枠組みの検討に入るといった段階だ。その後、実験施設おける実証実験を経て、2027年度中に新東名高速道路(現在建設中の区間が対象)で、社会実験を行う予定である。実際に設備やシステムを整えて実用実験ができるのは、2030年代の半ばになるという。

この状況ではまだ白紙に近い状態のように思えるが、海外ではすでにモデルとなるプランが作られている。イギリスが持つ構想はリニアモーターを使用したシステムで、西ロンドン地区に全長16㎞の専用線路を敷設し、物流事業者の施設から荷受け事業者に、直接輸送する仕組みになっている。すでに、実験施設でシステムの開発や走行試験を行なっているのだそうだ。

また、スイスの計画は主要都市を地下トンネルでつなぎ、そこに自動輸送カートを走らせるというもの。トンネル内には3線のレーンを設置し、24時間・時速30㎞で自動輸送カートが走行するのだという。2031年までに、チューリッヒ~ヘルキンゲン間の約70㎞で運用を開始する予定になっている。

「自動物流道路」は労働力不足(トラックドライバー・倉庫作業員など)・自然災害等への対応・CO2排出削減といった課題を解決するために、たいへん有効なシステムといえる。まだ計画は始まったばかりであるが、1日も早い実用化が望まれているのだ。