ランプがドライバー同士のコミュニケーションツールに!?

かつて、車両の灯火といえば白熱球が主流であった。フィラメントを焼いて光らせるために大量の電力が必要で、明るさを得るためには大きな反射板やレンズを必要としていた。電球に封入するガスに工夫を加えたハロゲンランプが登場し、光源としては明るくなったものの、ヘッドライトやフォグランプなどといった、遠くまで広く光を届けなければならない灯火については、大がかりな反射板やレンズが必要なことに変わりはなかったのである。

これを大きく変えたのが、HID(ディスチャージランプ)である。強い光源を持っているために、レンズ・反射板を小さくすることに成功した。これにより、車両の「目」であるヘッドランプを小さくできるようになり、車両の「顔」のデザインに自由度が増したのである。ただ、HIDはユニットを取り付ける必要のあることや、点火に時間を要するためにパッシングをしにくい、などというデメリットがあった。

現在主流となりつつあるのは、LEDランプである。とくに、高輝度タイプは強い光を放つのでヘッドライトとしても十分な能力を備えている。最大のメリットは、なんといっても消費電力の低さであろう。今後増加すると思われるEV(電気自動車)は、燃費ならぬ電費の低さが重要なポイントになるので、バッテリーの負担が小さいLEDは、うってつけのランプといえるのである。

LEDはこれまでのランプのように、必ずしも1灯で使用するとは限らない。ヘッドライト・ストップランプ(テールランプ)・ウィンカーランプなどには、通常複数のLED光源が使用されている。これらの点灯パターンを工夫すれば、様々な付加価値が生み出せるのではないだろうか。すでに実用化しているものとしては、シーケンシャルウィンカーがそうだ。

ヘッドライトの場合、車載カメラで前方の状況を把握し、それに合わせて複数の光源を制御すれば、最適な照射パターンでドライバーをサポートすることが可能になる。このシステムはADB(Adaptive Driving Beam、配光可変型ヘッドライト)と呼ばれており、最新の「高精細ADB」では1万6千個のLEDをコントロールすることができるという。

車両のランプは単に照らすだけのものではなく、ウィンカーやストップランプなどのように、ドライバーの意思を外部に知らせる役割も担っている。サンキューハザードやパッシングも、意思表示の一種といえよう。これは、車両間において通常の意思疎通が難しいからに他ならない。とくにトラックは運転席が高いこともあり、他の車両とのコミュニケーションがとりにくいのだ。

そこで現在、研究されているのが「路面描画ランプ」や「アニメーションランプ」である。前者はイラストや文字を路面に映し出す技術で、後者は車載用の電光掲示板や街頭ビジョンのようなものである。たとえば、見通しの悪い交差点で、前方路上に自車接近を知らせる描画を照射すれば、衝突事故を避けることができるかもしれない。このような安全面だけではなく、光のアートパフォーマンスに利用することも考えられる。法律との兼ね合いもあるが、ランプ類がどのように進化していくのか、今から楽しみである。

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