
物流の起点ともいえる港湾エリアでよく見かけるキリンのような形をしたクレーンを知っている人も多いだろう。このクレーンは海上コンテナと呼ばれるコンテナを貨物船に積み降ろしすることが主な役目だが、その実態について知っている人も少ないはずだ。そこで今回は、港に鎮座する巨大なクレーンについて説明していこう。
キリンのようなクレーンの名前は「ガントリークレーン」だ。ガントリーとは水平ビームと、これを支持する2本の支柱から構成される門型架橋のことなので、その姿からガントリークレーンと名付けられている。
そして、主な役目は大型の荷物やコンテナを効率よく持ち上げたり移動させることであり、主に港湾、または大規模な工場や建設現場などで広く利用されている産業用クレーンなのだ。
このガントリークレーンは、一般的に「門型クレーン」とも呼ばれ、左右の支持脚(ガーダー)、上部を横断するビーム(ガントリービーム)、荷物をつり上げるための巻き上げ装置(ホイスト)、クレーン全体を移動させる走行装置(レール、車輪など)操作キャビン(遠隔操作装置)という部品から成り立っている。
そして、その大きさは種類やメーカーによって異なるが、一般的に高さ50m以上、全長130m程度のものが多く、アームを伸ばすと高さが70m以上になるものや、約100mの高さがあるものも存在する。また200~350トンのコンテナを吊り上げることが可能なガントリークレーンもあるが、その大きさはやはり規格外といえる。

一見、同じように見えるガントリークレーンだが、いくつかの種類があるので紹介しよう。
フルガントリークレーン
両側の脚がレールの上に設置されており、主にコンテナターミナルや造船所など大規模な荷役作業に用いられる。非常に大きな荷物や長尺物の搬送に適しているタイプ。
ハーフガントリークレーン
片側の脚のみが地上のレール上にあり、もう一方は建屋の壁や構造物に取り付けられているタイプ。工場の屋内やスペースが限定される場所で利用される。
ポータルクレーン
フルガントリークレーンに似ているが、特に港湾でのコンテナ取扱いに特化した設計となっており、巨大なコンテナ船から効率よく荷物を積み下ろしするために使われる。
移動式ガントリークレーン
比較的小型で、車輪やキャスターを用いて自由に移動できるタイプ。工場や倉庫の中で部品の運搬や組立作業に使用されることが多い。
こうしたガントリークレーンは、一般的な他のクレーンにはない様々な特徴と利点があることにも注目してほしい。
まず、その大きな荷役能力が最大の特徴といえるだろう。ガントリークレーンは数十トンから数百トンの重量物を持ち上げることが可能なのだ。
次にクレーン自体がレール上を移動できるため、広い作業エリアをカバーできことに加え、屋外はもちろん、屋内の工場内にも設置でき、スペースや用途に合わせた設計が可能なのだ。
さらに最新のガントリークレーンには様々な安全装置や自動制御システムが搭載されていることや、重機や人力での困難な作業を効率的に行えるため、作業時間やコストを大きく削減できるという頼もしさもある。


街中ではなかなか見かけないガントリークレーンだが、港に行けばその姿は簡単に見ることができるはずだ。