2024年問題解決へ大きく前進か!? 「トラック新法」とは

2025年6月4日、参議院本会議にて「トラック新法」が賛成多数で可決して成立。6月11日に公布された。5月に行なわれた衆議院本会議では全会一致で可決。参議院でも投票総数234の内賛成232という圧倒的な数での可決。与野党一致でのトラック新法成立となった(反対票を投じた2名は誰なのだろうか……?)。

この法律は正式には「貨物自動車運送事業法の一部改正法案」とその仕組を支える「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法案」(やたら長い……)という名称で、全日本トラック協会などの業界団体が超党派の国会議員に働きかけ、5月23日の衆議院国土交通委員会(井上貴博委員長)で委員長提案として提出され、成立したものだった。

この新法が働きかけられた背景にはバブル期の1990年に制定された「物流二法」(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法)による規制緩和と物流業界の自由競争化、それによって生じた運送料金の値下げ競争や荷主と運送会社との力関係の歪み、ドライバーの賃金低下・労働時間の増加などの問題があった。それは現在の「物流の2024年問題」として表面化し、ドライバーの人手不足や高齢化、2024年4月からの働き方改革関連法の物流業界への本格適用(主に労働時間の厳密な制限)によりさらに深刻なものとなっていた。

「改正貨物自動車運送事業法」は

(1)トラック運送事業の許可更新制の導入(5年ごと)

(2)運送委託次数の制限(2次請けまで)

(3)適正原価を下回る運賃・料金の制限

(4)無許可事業者(白トラなど)への運送委託の禁止強化

(5)労働者の適切な処遇の確保

といった新たな5つのルールが柱となっている。その柱のひとつ「適正原価を下回る運賃・料金の制限」は、先述の1990年の規制緩和(業界では「1990年問題」と呼ばれる)により発生していた荷主側と運送会社との値下げ競争に法的に歯止めをかける画期的な政策。その「適正原価」は、国交省が現状の人件費や経費などを積み上げて算出。国土交通大臣が告示するという。その適性原価を下回ってはならない、ということが法的に明記されたことがこの新法では大きな前進であるといえる。これにより、ドライバーなど「労働者の適切な処遇の確保」につなげるというわけだ。

5つの柱のうち「トラック運送事業の許可更新制の導入」と「運送委託次数の制限」もその運賃低下を防ぐため政策で、運送事業者の5年毎の更新では運賃が下回ってはいないかを厳密に調査確認され、適正原価を支払わない荷主は是正指導や勧告・公表されることになる。

「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」では、改正貨物自動車運送事業法の施行後3年以内をめどに必要な法制上の措置を講じることや、独立行政法人による許可更新の事務や事業適正化支援を適切かつ効率的に実施できる体制の整備、政府による「物流制作推進会議」の設置などが明記されている。

また、改正貨物自動車運送事業法の4つめの柱「無許可事業者(白トラなど)への運送委託の禁止強化」への対策は交付日から1年以内に施行する見通しになっている。この白トラ対策は早くも行政では進められているようで、一部物流現場の声として「白トラへの取り締まりが厳しくなった」という声も聞く。

トラック新法の施行により運賃の適正化が法的に進み、それが賃金・待遇の改善としてドライバーの利益とモチベーションアップにつながっていけば、若手ドライバーも増えていき2024年問題の解決も大きく前進していくことになるだろう。

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