なんか勇ましい感じがするけど、傭車ってなんだ?

物流業界には「傭車」というシステムがあるのをご存じでしょうか。あまり聞きなれないどこころか、傭車という文字も見慣れないのではないでしょうか? これは「ようしゃ」と読みますが、今回はその傭車について説明していきます。

もともと傭車の「傭」という文字は、賃金をもらって労力を提供する者という意味があります。軍事、映画などの世界では「雇われた兵士」=「傭兵」が有名ですね。バチカン市国のサン・ピエトロ寺院の衛兵は、伝統的にスイスの傭兵が務めています。そして「傭兵+車」から発生したのが運送業界の専門用語である「雇われたクルマ」=「傭車」というわけです。

では物流業界における傭車とはどんな意味なのでしょうか。先ほど説明した内容を加味すれば、賃金をもらって車(労力)を提供する者という意味になります。

もっと具体的に言うと、自社の仕事を下請けの運送会社や個人事業主のドライバーに依頼することを指すのです。ただし「傭車」という呼び方はあくまでも業界用語であり、正式には「利用運送」という事業形態になります。そのため、傭車を依頼する際には、利用運送契約書や運送委託契約書の記入が必要ですが、これは後ほど説明しましょう。

さてこうした傭車ですが、大手の運送会社が繁忙期で、自分の会社の車両が一時的に不足するようなときに発生しやすいといわれています。運送業界のなかで助け合うシステムですから便利ではあるのですが、ここで傭車のメリットとデメリットを紹介していきましょう。

まず傭車を依頼する荷主側のメリットとデメリットです。

荷主側にとってのメリットは、緊急時に対応できるということです。イレギュラーな事態が発生しても傭車でまかなうことで計画的に仕事を受けることができます。

また、必要なときだけ傭車を依頼すれば人件費や自動車税などの固定費の削減もができるのもメリットのひとつです。

その一方で、傭車先の社員やドライバーが問題を起こすというリスクがあります。自社の社員やドライバーであれば、業務に関する教育や指導が行えますが、傭車はあくまでも依頼先であり、すべてをコントロールすることが難しいのです。

では次に傭車を引き受ける側はどうでしょうか。

傭車を引き受けた場合、依頼主への実績を積むことができる上に、その結果がさらなる仕事に繋がる可能性もあります。また繁忙期なら安定した収入を得られるのもメリットでしょう。

しかし、万が一交通事故が発生した場合、傭車を請け負った側が責任を負うリスクもあります。

こうした傭車を利用するためには「利用運送」の登録または許可が必要になります。意外と知られていないのですが、利用運送の登録をしないまま他社に傭車を依頼してしまい、違法となってしまった業者も少なくありません。

許可を得るには、貨物利用運送事業法に基づく申請書を作成し、国土交通大臣宛(申請窓口は運輸局)に申請書類を提出する必要があります。書類の提出から認可が下りるまで、3か月から4か月ほどかかるので、困ったときにすぐ傭車を依頼するということはできないのです。

仮に貨物利用運送事業の登録または許可が下りていないまま傭車を依頼してしまった場合、事業停止や登録・許可の取り消しなど、重い行政処分の対象となってしまいます。

傭車は緊急時には頼れるのは間違いありませんが、そのメリット、デメリットを理解したうえで利用する必要があるのです。

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