トラックとハシゴの話

いろいろなトラックを見ていると、ハシゴが設置されているキャビンを持った車両を見かけることがあります。しかし、その一方でハシゴが付いていないトラックも多く見られます。全体的な割合は不明ですが、サービスエリアなどでたくさんのトラックを観察していると、ハシゴが付いていないトラックのほうが多いようです。

では、なぜハシゴがついているトラックとそうでないトラックが混ざっているのでしょうか。その答えを書く前に、トラックのキャビンについているハシゴの役目を説明しましょう。

トラックのハシゴは「窓ガラスやキャビンの清掃」「キャビン屋根に積んであるものの取り出しと収納」「冷凍機などのメンテナンス」の3つが主な役目です。

大型トラックともなるとキャビンの高さが3mほどになることもあるので、はしごを使って作業するほうが効率的なのです。もしハシゴがない場合は、キャビンの上部に登るために、それなりの長さがあるハシゴをその都度用意しなくてはならないため、キャビンに取り付けられているほうが便利だということです。

しかし最近では、キャビンに取り付けられているハシゴは、取り外されてしまうケースが多いです。もともとハシゴはオプションで付けられているパーツなのですが、3mにもなる高いキャビンに登って、万が一転落事故が起きたときには、死亡事故につながる恐れがあるたため、安全面を考慮して、キャビンの上に登れないように措置が取られることが増えたというわけです。このことから、トラックによってハシゴが付いている車両とそうでない車両に分かれるのです。

このトラックのハシゴについてですが、キャビンについているハシゴとは別に、2023年10月より労働安全衛生規則の一部改正での荷役作業時における安全対策が強化されたことで、昇降設備の設置が必要な貨物自動車の範囲が拡大されたので、ハシゴつながりで説明しておきましょう。

これでまでは、最大積載量5トン以上の貨物自動車には昇降設備の設置が必要でした。しかし、法律の改正によって、最大積載量 2トン以上5トン未満の貨物自動車も昇降設備の設置が義務づけられたのです。

これは、陸上貨物運送事業における労働災害が増加傾向にあり、多くが荷役作業時に発生していることが原因です。そして、陸運業の死傷災害のうち最も多いのは墜落・転落災害であることも大いに関係しているのです。

データを見ると、最大積載量5トン以上のトラックからの災害が約5割、最大積載量2トン以上5トン未満のトラックからの災害が約4割。最大積載量2トン未満のトラックに起因する災害件数は少ないとのですが、車両の種類別に見ると、平ボディ、ウイング車での災害が約5割を占めています。

このようにキャビンに装着されたハシゴは徐々に数を減らしているものの、荷役作業を安全に行うための昇降設備は増えていくのですが、どちらも作業場上の安全を最優先した結果といえます。

そのためキャビンにハシゴが装着されたトラックを見る機会は、これからは減っていきそうです。

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