
乗用車のドアは左右両方に付いているが、バスは非常口を除くと左側にしかドアがない。マイクロバスは運転席のドアこそ右側にあるが、乗客用のドアは左側だけである。これは、車両の通行を左側と定めたわが国の交通ルールを踏まえて、乗客の安全性や利便性考えた結果であるといってよい。
このように、バスのドアは左側に集中しているがその数にはばらつきがある。自家用バス・観光バス・長距離バスは多くの場合、左前方1か所にしかドアを持たない。マイクロバスは、運転席を除くと乗客用は中央に1か所だ。これらのバスは、乗降頻度が高くないことや運用上停車時間を長く取れることなどから、複数のドアを必要としないのである。また、着席乗車が基本なので座席は多いほうがよく、ドアが多ければそれだけ座席数を減らすことになるのだ。
これに対して、路線バスは高い頻度で停留所に停車し、その都度相当量の乗降が発生する。特にワンマンバスでは運転手が料金収受などの乗客対応を行うために、乗降客の動線をスムーズにしてその負担軽減を図る必要があるのだ。そこで、ドアの数を増やして効率的な客の流れを作る必要があったのである。

こういったニーズから一時は3ドア車なども存在したが、現在では単純に乗車と降車を分ける2ドア車が主流になっている。ただ、このドアの位置にも違いがあるのだ。運転席左横にある前方のドアはどのバスも共通しているが、2枚目は車両中央にあるタイプと後方にあるタイプの2種類に分かれる。これが、最近では中央にあるタイプが主流になってきているのである。その理由は、バスの構造が変わってきたからなのだ。
バスの機器類の多くは、基本的に床下に収納されている。そのためにどうしても床が高くなり、乗車するには1~2段程度ステップを上がらなければならなかった。しかし、バリアフリーの考え方からノンステップ(低床)バスが開発された。このバスは前方から半分程度の床を低くしているために、床下の機器類を後部に移す必要がある。エンジンもリアに配置されていることが多いので、後部の床は逆に高くしなければならなくなった。そうなると、後部にドアを設置することはできない。路線バスの多くが2枚目のドアを中央に配しているのは、こういった事情によるものなのである。

また、中央にドアがあることで安全面のメリットもあるという。それは、運転手がドア付近の状況を把握しやすいことだ。ワンマン運転では、運転手がドア扱いや安全確認をしなければならない。このとき、センサーではドア付近に何かがあることしかわからず、ミラーなどで目視確認をする必要性が出てくる。その場合、当然のことながら物理的に近いほうが確認をしやすいのである。
このように、路線バスの2枚目のドアが中央に配される理由は明確なのだが、前方・中央どちらのドアから乗降すればスムーズな動線になるのかというと、その答えはいまだに見つかっていない。地域・バス会社・路線などによってさまざまな事情や考え方があり、個別にメリット・デメリットを検討して決定しているのが現状だ。ただ、路線バスは地域内で運用されていることがほとんどなので、ルールが定着していれば問題が起きないのである。
