
これまでタイランド(以下タイ)で走るクルマといえば、日本車がほとんどだった。2010年代にはそのシェアは9割を超えていたほど。世界的にはマイナーともいえる、日本やイギリスと同様に右ハンドル/左側通行という交通事情ということもあり、また早くからASEAN各国や北米などへ輸出する日本メーカーの生産拠点が多かったためだ。
そんなタイで近年、日本車のシェアが縮小傾向だという。いわずもがな中国車による進出(拡大)で、2023年には7割台に減っている。ではトラックではどうなのだろう。日本の大手部品メーカーのタイ支社に駐在する人物に聞いてみた。
「タイではマルチな用途に使えるピックアップトラックの需要が高いんです。トヨタや日産、三菱はもちろん、日本では見かけないいすゞのピックアアップトラックが人気。とはいえやはりここ5年くらいでしょうか、中国メーカーのクルマやトラックが増えています。体感的にも明らかで、かなり多いイメージです」と日本車のシェア低下を実感しているようだ。
また注目すべきは大型トラック。クルマと同じようにこれまでタイでは日野やいすゞなど日本メーカーの車輌がポピュラーだったが、最近ではやはり中国メーカーの、それもEV車輌が多くなっている、というのだ。
日本では総重量の制約と航続距離の長さ(距離を長くするためには重たくなり、荷の積載重量が減る)という命題がある。いずれかを優先すると他方が影響を受けるというトレードオフの課題がなかなかクリアできない。充電時間も燃料の給油よりも時間がかかるということもあり、日本における大型の、EVトラックの普及についてはまだまだ途上段階だ。日本では宅配など「ラストワンマイル」といったエリアやルート限定での用途として、小型〜中型トラックでのEV化はジワジワと広がりを見せているようだが、大型トラックとなるとほぼ普及は進んでいない。


現地から届いたトレーラー写真を見てほしい(写真2&3)。日本メーカーのタイ工場が多く所在するタイ北部のプラチンブリーにある工業団地でのスナップ。ややピンぼけしている画像で恐縮だが、トラクタのキャビン背面に大きな(文字どおりの)ブラックボックスを背負っているのがわかるだろう。さらに側面にはバッテリーを示すイナズママークのステッカーが貼ってある。
工業団地から輸出拠点の港までおよそ160〜170km。往復で400km弱の航続距離があるはずとのこと。しかもこの大型EVトレーラーはレアなわけ(たまに見かける)ではなく、かなりの頻度で走っているという。

ちなみにこの車輌はFOTON(フォトン)のAuman Rという大型トラックのようだ(写真4)。フォトンは1996年に設立された中国の新興商用車メーカーで、中国の大手電池メーカーCATLとも業務提携している。このフォトン、小型〜中型ではEVトラックとして日本にも進出している。
タイで「車輌の総重量規制」がどれだけ明確に実行されているのかは不明だが、物流という現場でも粛々と中国EVメーカーの進出が加速中であることは間違いなさそうだ。

