トラックデザインの変化

トラックの前面デザインは、大別するとボンネット型とキャブオーバー型の2種類になる。トラックの登場当初はボンネット型が先行し、のちにキャブオーバー型が登場するといった流れだ。どちらがデザイン的に優れているかということは嗜好の問題もあり、一概に述べることは難しいといえよう。

ボンネット型のメリットは、

・ドライバーなど乗員の快適性

→エンジンがキャビンの前に配置されているので、振動や騒音の影響を受けにくい。

・衝突安全性

→ボンネットが出ている分、正面衝突などの際にクラッシャブルゾーンになる。

・整備性

→エンジンがボンネット内にあるので整備がしやすい。

・空力抵抗

→キャブ高を低く抑えられるので前面投影面積が下がり、それに対する全長が短いことが空力特性を向上させ、燃費向上などにつながる。

といったことが挙げられよう。しかし、わが国では車両の全長規制が厳しくなったこともあって、次第にキャブオーバー型が主流となっていき、ボンネット型は姿を消していったのだ。

キャブオーバー型のメリットは、運転席から前方直下が確認しやすいなどという安全面もあるが、なんといっても積載効率の高いことが大きい。全長規制がある以上、キャビンを短くすればそれだけ荷室を大きくすることができるという理屈だ。

正面が切妻型になると角ばった顔立ちになって武骨さが増し、デザインも限られてくる。そのようなトラックにステンレスや鉄などの素材で作った部品を使い、きらびやかに飾り立てたのがデコトラである。デコトラブームは、トラックがボンネット型(丸型)からキャブオーバー型(角型)にデザインが変わったことにも、一因があるといってよいだろう。

無骨なデザインが多かった角型も、1990年頃から変化が見られ始める。1989年に日野自動車が発売を開始した、中型トラック「クルージングレンジャー」を皮切りに、1992年登場の大型トラック「プロフィア」、三菱ふそうトラック・バスの「フルコンファイター(1992年)」や「スーパーグレート(1996年)」、いすゞ自動車の「320フォワード(1996年)」や「ギガ(1994年)」、UDトラックスの「ファインコンドル(1993年)」や「ビッグサム(1990年)」などは、角型ながら空力抵抗を考えたデザインが取り入れられており、見る者を魅了するカッコよさを持つようになったのだ。

トラックは荷物を運ぶ営業用の車両だから、積載効率や燃費にはどうしてもシビアになる。法律で決められた範囲のなかで、いかに効率的な車両を作るかが問われているわけだ。乗用車でも風洞実験の結果、高い空力性能を持つのが卵型だと分かったとき、各メーカーが同じようなデザインのクルマを量産した時代があった。

しかし、クルマは単に移動の道具というだけのものではない。効率を求め過ぎてデザインは画一化されてしまっては面白みに欠けるのだ。現在、乗用車は消費者のニーズに合わせて再びデザインの多様化傾向がみられる。事実上のメーカー統合により、OEMや部品の共有化が進むが進むトラックに、そこまで求めるのは酷なのかもしれない。とはいえ、トラックドライバーやトラックファンからすれば、これからも特徴あるデザインが採用されることを、願わずにはいられないだろう。

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