
地球温暖化の影響で、9月や10月でも夏日が発生するほど暑い日が多くなった日本。そんなときには冷たいアイスクリームを無性に食べたくなるが、ちょっと近くのコンビニに行けばすぐ手に入るのだから、便利な世の中になったものである。とはいえ、アイスクリームは常温下に置くとすぐに溶けてしまう。それでは、遠方の製造工場からどのようにして運んでくるのであろうか。
その答えが冷凍車による輸送であることは、多くの人が気付いているに違いない。その冷凍車はアイスクリームを輸送するために、40℃に迫る猛暑日のなかで庫内をどの程度の温度にまで冷やしているのかというと、なんと-20℃なのだそうだ。これだけの冷気を生み出すためには、相応の大掛かりな装置をトラックに装着しなければならない。
冷やすための仕組みは、家庭用のエアコンや冷凍・冷蔵庫と同じ原理だ。コンプレッサーや熱交換器といった機器のなかで、冷媒ガスを圧縮・膨張させてまわりの熱を奪い冷気を作る。コンプレッサーを稼働させるためには大きなパワーがいるから、家庭用のものは大量に電気を使うことになるのだ。


トラックの場合は、エンジンを利用してコンプレッサーを回している。キャビン用のエアコンは駆動用のエンジン付近に取り付けて、ベルトを使い高い回転力でコンプレッサーを回しているのだ。しかし、大型トラックやトレーラーの荷室用冷凍・冷蔵装置の場合はそうではなく、専用のエンジンを別途に積んでいるのである。
このエンジンは耕運機や発電機に使用されているものと同系統のものであり、駆動用エンジンとは違う場所に取り付けられているので、騒音や振動に対する対策が十分とはいえない。そのため、他のトラックに比べてまわりにうるさく思われたり、乗り心地がよくなかったりするのだ。
そうであるにもかかわらず、アイスクリームなどの冷凍・冷蔵が必要な荷物は、温度管理を厳密に行なう必要があるために、暑い日にはそのエンジンを常に稼働状態にしていなければならない。もし、騒音などに関してクレームが入ったとしても品質管理上、冷却装置を停止するわけにはいかないのだ。

このように、冷凍・冷蔵用トラックは大掛かりな装置で荷室内を冷やしているのだが、保温のためにも様々な工夫がされている。庫内の壁や天井には、軽くて高性能な断熱材がびっしりと埋め込んであり、床には抗菌作用のあるステンレス製の床材を敷き詰めてあるのだ。

また、多くの場合は後部ドアをフルオープンにして荷物の出し入れをするのだが、その際に冷気が逃げないように樹脂製のカーテンなどを取り付けてある。アイスクリームなど温度管理が必要な食品は、指定された温度に保たなければならない。たとえ一時的なものであっても、庫内温度が大きく変化することは品質に直結する問題なのだ。
近年ではECサイトの利用が増えて、冷凍・冷蔵の荷物も小口の配送が増えている。そこで配達をより効率的に行なうために、荷室を分割して冷凍商品と冷蔵商品というように、管理温度が異なる複数の商品を1度に運べるタイプのトラックも登場しているのだ。これは、ツーエバーと呼ばれる仕様のもの。新鮮な商品をよりよい状態で様々な場所に届けるためにも、冷凍・冷蔵とラックのさらなる活躍が期待されている。
