ボルボのデュアルフューエルLNG(液化天然ガス)トラックが実証実験に参加

やや失速感はあるものの、次世代の自動車といえばEV(電気自動車)が最有力と思われがちだ。しかし、現在の技術で大型トラックを完全EV化するためには、越えなければならない壁が多いといわれている。比較的EV化が進んでいるといわれる乗用車でも、化石燃料の内燃機関を使用するタイプが現状では大半を占めていることからも明らかなように、動力としてはそれが最適解とされているのだ。

とはいえ、世界各地で発生している異常気象を考えれば、地球温暖化対策はすでに待ったなしの状況にあるといえよう。そのようななかで少しでも化石燃料の使用を少なくするために実用化されたハイブリッド車の功績は大きいといえる。同様の効果を求めて急ピッチで開発が進められているのが、LNG(液化天然ガス)を燃料とするトラックなのだ。

天然ガスも化石燃料の一種であり、動力の発生には内燃機関を使用する。ゆえに、ガソリンや軽油を使用する内燃機関とメカニズムが共通するという利点を持つ。ただ、化石燃料を燃焼するということには変わりはないので、有害廃棄物が出ないわけではない。とはいえ、ガソリンや軽油に比べるとクリーンであり、地球温暖化対策としては十分期待が持てるのだ。

環境省では「小規模分散型LNG充填所ネットワーク構築による大型トラック物流の低炭素化手法の実証」として、2021年度からLNG充填所に併設するCNG(圧縮天然ガス)製造・充填装置の新規開発と実証を行ってきた。これにより、

・気化したガスの再液化に使用していた液体窒素の使用量を減らす。

・同一拠点でLNGとCNGの重点を可能にする。

などを実現し、事業経済性を向上させると同時に、LNGトラックの普及・拡大を目指そうというわけだ。

この実証実験に、ボルボのLNGトラック(FH4×2トラクタ)2台が新たに加わった。同車両は、スーパーキャブタイプで排気量は13ℓ。そのエンジンから生み出す馬力は、同タイプのディーゼル車に匹敵する460PSに及ぶ。LNGのタンク容量は205㎏で、別途に軽油を170ℓとアドブルー64ℓを搭載している。

なぜ、LNGトラックなのに軽油を搭載しているのかというと、実はひと口にLNG車といっても以下の4種類が存在するからである。

・天然ガス専焼車:天然ガスだけを燃料とする。

・天然ガスハイブリッド車:天然ガスエンジンに電気モーターを組み合わせる。

・バイフューエル車:天然ガスとガソリンを切り替えて使用する。

・デュアルフューエル車:天然ガスに着火源として軽油を混合させる。

ボルボFH LNGは、デュアルフューエル車なのである。

環境省の実証実験は三菱商事が代表事業者になっており、すでにいすゞ自動車の大型トラック・ギガLNGによってデータ蓄積が進められてきた。ここにボルボFH LNGが参加したことで、新たにトラクタによるデータが加わることになり、より精度の高い実証結果を得られるようになるわけだ。ボルボにとっても、日本市場においてLNGトラクタのよいPRチャンスになることだろう。こういった実証実験を積み重ねることで、LNGトラックの実用化が少しでも早く進むことを期待したいものである。

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