理不尽なクレームを受けるトラックドライバーの現状

「物流の2024年問題」が現実のものとなり、トラックドライバーの人手不足は深刻な状況になっている。通常、需給バランスが崩れた場合は過少な方の立場が強くなるものだが、運輸・流通業界では必ずしもそうではないらしい。幾分改善の兆しが見えてきたともいわれるが、トラックドライバーから聞こえるのは嘆息ばかりのようである。以下に、理不尽なクレームを受けたトラックドライバーの実例を3つ紹介しよう。

①待機場所のクレーム

着荷先の到着時間は指定されることが多く、時間どおりに着くためにトラックドライバーは必死の努力をする。ところが、ほぼ時間どおりに到着しても着荷先が混み合っていれば、待機を余儀なくされることも少なくない。これだけでも十分に理不尽だが、その待機場所に交通量の多い路上を指定されることがあるのだ。そんな場所に長く停めていれば、通報されて警察から警告を受ける。そこで正直に事情を説明したところ、着荷先にも警察から指導が入ってしまった。これが着荷先の逆鱗に触れ、出入り禁止を言い渡されたという。

②騒音のクレーム

冷凍・冷蔵車には、それらの装置を稼働させるためのエンジンがある。着荷先の冷凍・冷蔵倉庫の敷地内で待機するときには、「スタンバイ」と呼ばれる電源があるので、そのエンジンを動かす必要がない。しかし、倉庫の敷地外で待機を指示された場合、停車中であったとしても荷物の品質を守るために、そのエンジンは稼働させ続ける必要があるのだ。

その場所がコンビニの駐車場などであれば、駐車している間は常にエンジンがかかった状態になる。近隣が住宅街ならその騒音で直ちにコンビニにクレームが入り、その場から立ち去らざるを得なくなくなるのだ。ほかに停める場所がなければ、無意味にあたりを走っているしかない。万一、少し離れた場所で荷降ろしの連絡が入れば、どうしても到着に時間がかかる。結果、待機場所の指示に従わず到着が遅いという理由で、出入り禁止になったというのである。

③車両汚れのクレーム

長距離トラックは、深夜に高速道路を走破することが多い。山間部や田園地帯などを通過すれば、無数に飛来している昆虫類との接触は避けられない。夏場ならば、それによってボディに付着する虫の死骸は数えきれない程になるだろう。確かに、その見た目は良いものではない。しかし、深夜に長距離を走っていればそれはある程度やむを得ないことなのである。

ただ、着荷先が食品倉庫であれば仕方がないでは済まされない。もちろん、虫の死骸はトラックのボディにのみ付着しているのであって、荷物には何の影響もない。それでも食品倉庫側からすれば、汚いトラックで食品を運んでくるということに抵抗を持つ。なぜなら、万一それを納品先に見られでもすれば、返品を伴うクレームに発展しかねないからだ。ゆえに、虫の死骸を付着させた状態で来るようなトラックは、出入りを差し止めるということになってしまうのだ。

トラックドライバーや運送事業者にとって、取引先から「出入り禁止」を言い渡されたときのダメージは計り知れない。それを恐れるあまり、荷物の梱包や倉庫への搬入作業などを要請されても、断り切れないという現実がある。労働時間の削減も軽視するべき問題ではないが、運輸・流通業界全体の意識改革も強力に進めていく必要がありそうだ。

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