
マテハン(マテリアルハンドリング。荷物の積み降ろしや運搬、仕分けなどの作業全般。またはそれらを効率化させるための機器)のなかでも、比較的利用頻度の高いパレット。荷物を載せてそのままフォークリフトで運ぶことができるという、利便性の高さが重宝されている要因なのだろう。しかし、まったく問題がないわけではない。素人からすれば同じような四角い木の板に過ぎない。しかし、実際は非常に多くの規格があってそれぞれ微妙に大きさが違うのだ。同じサイズであれば、隙間なくきれいに並べることができるのだが、規格が異なるとそういうわけにはいかない。
パレットは世界的に使用されているが、国ごとにその運用の仕方に相違があるという。そのため、北米・欧州・アジア・オーストラリアといった地域によって、それぞれ微妙にサイズが異なっているのである。国際標準化機構(ISO)の規格だけでも、6種類あるというから驚きだ。わが国ではJIS規格(日本産業規格)により、1970年に「T11型」を国内の一貫輸送用として規格化したのだが、現在に至るもその普及率は3割程度なのだそうだ。
パレットの規格が統一されることによる最大のメリットは、荷物を同じパレットに載せたまま最終着荷地に運べるようになることだ。出荷事業者・物流事業者・中継倉庫事業者・着荷事業者などが、それぞれ違う規格のパレットを使用していたのでは、いちいち載せ替えることになるから運送効率が下がる。
ただ、仮に規格が統一されたとしてもパレットが各所に適正配置されていなければ、過不足が発生してうまく運用できないなどということになりかねない。これらの問題を、一挙に解決するのがスマートパレットなのである。これは、パレットにタグを取り付けることによって、その所在を一元管理できるというシステムだ。



タグからはパレットの情報を電波で発信しているのだが、それがパレットの管理をするセンターに直接届いているわけではない。そういったシステムにすると、タグから発信する電波の出力を大きくしたり、中継アンテナなどを設置したりしなければならないのでコストが膨れ上がる。タグの電波は、パレットが置かれている倉庫などの拠点に設置された受信機に送信されているのだ。ゆえに、電波が届く範囲は300m程度でよいということになる。
拠点の受信機にキャッチされた電波は、同じく拠点に置かれたコンピュータに送られてデータとして収集される。そのデータはインターネット回線を通じて、パレットを管理するセンターに送る仕組みになっているから、パレットの所在・在庫量・種類などが一目瞭然となる。この情報を利用すれば、パレットを必要とする拠点に必要な量を、あらかじめ回送しておくことができるようになり、パレットの紛失や滞留といった問題を解決することができるのだ。


このタグは後付けが可能なタイプなので、利用はパレットに限られるものではないから、かご車などにも転用ができる。タグに内蔵された電池の寿命は10年で、その間のメンテナンスはほとんど必要がない。タグから発信されるデータは1度に5万件の読み取りができるから、全国規模のパレット管理でも対応が可能だという。このように、物流システムもICT(情報通信技術)・IoT(モノのインターネット。モノ同士がインターネットにつながって情報交換をする仕組み)などを積極的に導入することにより、ドライバーや作業員の負担を軽くすることが求められているのだ。
