意外と面白い!? 農業用車両の最新事情

一般の人からすれば、農業用車両は耕運機(トラクター)や田植え機のイメージが強いだろう。しかし、実際にはもっと様々な車両が存在する。なかでも、種類が多いのは運搬用のものだ。農機具や肥料などを家から運んできたり、収穫物を農協などに運んだりするときに活躍する。斜面のある耕作地や畑などに乗り入れる場合には、悪路に強いクローラタイプが使用される。農道などが整備された平坦な場所で使うときには、ホイールタイプであることが多い。荷台は平ボディが基本だが、収穫物によってはダンプタイプや昇降式のものもある。

草刈り機は、作付けを控えた田畑や荒れ地の除草に使用される。一般の家庭でも使用される手押しタイプのものは車両とはいい難いが、農作業では作業者が乗車できるバギータイプが主流だ。この車両は草を刈るための刃をボディの下に装備しており、150㎜程度の草でも簡単に刈り取れるのだという。

最新のものでは、傾斜による横転事故を防ぐ機能を持つ機種がある。車両が30°以上の傾きを5秒以上継続したときに、自動的にエンジンを停止するというものだ。これなら、転倒によって作業者がけがをするということはない。農作業はワンオペで行われることも多いため、転倒事故などで作業者が動けなくなると、発見が遅れて命にかかわる危険性があるのだ。

飛鳥特装からリリースされている「M31ユーロⅥ」は農業の専用機というわけではないが、ダンプ式の小型トラックがベースになっており、様々なオプションやアダプターを装備することで、除草・除雪などといった作業ができる車両だ。ダイムラートラックがドイツで製造しており、ウニモグの小型版のような外観を持つ。悪路に強く、作物・農機具・肥料といった様々なものの運搬にも活躍しているのだ。

農業も担い手不足が深刻になっており、作業者の負担軽減を図る車両の開発が進んでいる。たとえば、作物・農機具・肥料などを運ぶ車両の自動運転化もそのひとつ。ただ、自動運転といっても自動車のそれとは随分と違う。カメラなどのセンサーはあるものの、それは前を歩く人を捉えるためのもの。すなわち、先行する人について動く台車のようなものである。

農地は私有地だから、他の車両が侵入しないので自動運転を導入しやすい。技術的には自動車のような高度な自動運転も可能だが、それでは多額のコストがかかってしまう。農業は決して収益性の高い事業ではないから合理性や利便性だけではなく、経済性にも配慮しなければならない。そのためには、自動運転といってもトラックの隊列走行のようなシステムが望ましいのである。

とはいえ、必ずしも人が運搬車を先導できるとは限らない。先導ができない場所を想定して、リモコン機能も付加されているのだ。畑のなかなど悪路走行に備えて、車両には4WD・4WSを装備。条件のよくない場所でも、200㎏の荷物を載せて走行することができる。動力は電気で、満充電から連続で使用できる時間は8時間に及ぶ。これなら、電気の供給設備がない田畑でも丸1日使用することができるだろう。このような日本の農業を支える技術のさらなる発展に、大きな期待が寄せられているのである。

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