
「UDトラックス」はかつて日産ディーゼルであったが、その後一時期ボルボグループ傘下に入り、現在ではいすゞ自動車の子会社になっている。紆余曲折のある歴史をたどっているが、結果的にはグローバル化を推進することができたといえるのかもしれない。今では世界各地に販売拠点があり、そこでは多くの従業員がトラック販売や、そのアフターフォローに勤しんでいる。
本来、同じ看板・商品を販売している拠点であれば、ユーザーはいつでもどこでも同じサービスを受けられるはずだ。しかし、実際は拠点ごとにレベルの差があるなどということも珍しくはない。同社ではそういったことが起きないように、必要な知識や技能が習得できていることを確認するために、ディーラーが競い合うイベントを開催している。それが、「UD現場チャレンジ」だ。

この催しは、2014年から隔年ごとに開催(2020年はコロナ禍で中止)されている。2024年大会の予選は、世界40か国9地域で732チーム2732名が参加して行なわれ、そのなかから10か国の14チームが決勝に駒を進めた。競技は車両の種類によって分かれており、日本でも多く走っている「クオン」の部と、海外で活躍する「クエスター」の部の2つがある。
チームはメカニック2名・部品スタッフ1名・フロント1名と、リーダーを合わせた5名で構成するのが基本だが、各チームの事情に合わせて人数はまちまちである。基本的にリーダーは競技に参加するのではなく、通訳や質問を行うなどして、チームメンバーと審査員の間をつなぐ役割を担っているのだ。


競技は、5つの部門に分かれている。ひとつ目はエレクトリックがテーマ。ワイパーモーターの結線を配線図を見ながら行ない、指示された動作をさせるというものだ。配線記号やコードの意味を理解するだけではなく、構成部品を識別できるスキルを持っていなければならない。また、マルチメーターを使って部品を測定し、不具合を特定することも求められる。
ふたつ目は、トラックの心臓部ともいえるエンジンだ。指示に従って部品を測定し、異常があればそれを特定して対処する。測定器や特殊工具を扱うスキルが求められる。3つ目では、テックツールと呼ばれる測定器使用する。フライホイールとカムシャフトのセンサーを測定し、信号値や信号波形から不具合を特定しなければならない。



4つ目は、トランスミッションだ。コントロールハウジングにあるシフトフォークを確認し、不具合を特定して修正したのちに再度チェック。トランスミッションの構造を理解していることや、不具合についてサービス情報で確認し、それに沿って対処することが求められる。5つ目は部品管理に関するもので、保証期間対応用部品の保管・管理状態やそれにかかわる申請書の記載事項を確認する。
5部門とも各チームに与えられた時間は50分だが、質問・確認・審査集計も含まれるので実質的な競技時間は30分しかない。この限られた時間の中で、前述の難解な課題に挑戦しなければならないのだから、ディーラーのメカニックやスタッフのレベルは、たいへん高いものが要求されているということである。こういったプロの育成・レベル維持がいかに大切かということを、改めて示した大会であったといえよう。

