
街なかを走っているトラックから空気が漏れるような音を聞いたことがありませんか。それは「ブシュー」というときもあれば、金属音で「キシューン」ということもあり、正体がわからないとびっくりしてしまうこともあります。ではトラックやバスから聞こえるこの音は何なのでしょうか? 実はこの音、トラックやバスにおいて非常に重要な役割を持っているのです。
トラックから発せられる「プシュー」という音の正体は、大型車のサイドブレーキにあたる「ホイールパーキングブレーキ」が発している音なのです。そして、なぜ独特の音がするのかというと、ブレーキシステムが空気を排出しているからです。普通のクルマの場合は油圧によってブレーキパッドがブレーキローターを押さえつけることで摩擦が発生し、車速を落とすのですが、トラックのブレーキの一部は空気の力を使ってブレーキパッドを押さえつけるため、構造上空気が漏れるような音がするのです。逆にいえば音がするということはしっかりと作動しているという証拠です。

ではもう少し詳しくトラックのブレーキについて説明していきましょう。
通常、普通車や軽自動車、小型のトラックなどではワイヤー式のサイドブレーキを採用しているクルマが多くあります。このようなワイヤー式のサイドブレーキは、サイドワイヤーを引っ張ることでブレーキ装置を作動させています。
しかし大型トラックでは、サイドワイヤ-方式ではなく圧縮したエアーによってブレーキをかけているのがほとんどです。そのため大型車が停車する際、プシューという独特な音が発生しています。
ちなみにエアーサスペンションと呼ばれるパーツも同じように原理で作動しているため、動かしたときには空気が排出される音がします。
ここで「なぜ空気が抜けることでブレーキがかかるのか?」と思いませんでしたか。この仕組みには安全装備として欠かせない仕組みが組み込まれているのです。
もし空気を入れなければブレーキが作動しないような仕組みだと、万が一空気を溜めるコンプレッサーやエアータンクが破損してしまうとブレーキが使用できなくなります。しかし、通常とは逆の使用方法、つまり空気が抜けることでブレーキが効く構造であれば、もしコンプレッサーやタンクが壊れてしまってもブレーキが作動し続けるということなのです。

ではなぜ大型トラックと乗用車では、採用しているブレーキの装置が違うのでしょうか。そこで大型トラックと乗用車のブレーキがそれぞれ違う理由を説明します。
結論からいえばトラックは乗用車に比べて大きくて重いことがブレーキシステムが違う理由です。
極端な例ですが、軽自動車がサイドブレーキの引き忘れで勝手に転がりだしたとしても、ごく低速であれば人の力で止めることは可能です。しかし大型トラックの場合、少しでも動き出せば、人の力で停止させることは不可能です。
そこで先ほど説明した、普通車は「ブレーキフルード」というオイルでブレーキを作動させ、大型トラックでは、油圧ではなくエアー式を採用しており、エアー式の方が制動力が大きいという特徴が重要になるのです。
その他にも大型トラックやバスなどには「リターダーブレーキ」や「排気ブレーキ」なども存在しています。つまり、乗用車と同じブレーキシステムでは大型車を制御することができないので、エアー式のほか様々なブレーキシステムを搭載することでトラックの制御を行っているというわけです。
さらに大型トラックのブレーキには、フェイルセーフ機能というものを採用しています。フェイルセーフは、装置やシステムが誤作動したり故障した場合、その装置が凶器にならないよう安全に停止させる設計やシステムのことです。これは電気関係で使われるブレーカーのような役割を果たし、転がっただけでも大きな事故を引き起こす可能性のあるトラックが暴走しないようにしてくれる安全装置です。
車体が大きく重量があるトラックは、制御できなくなったときには大きな事故につながります。そのためブレーキシステムには何重もの安全装置が組み込まれているというわけです。
