ただのカーブじゃないクロソイド曲線とは?

普段何気なく走っている道路には安全性を高めるための工夫が多く隠されているのをご存じでしょうか。知らなければ絶対に気がつかないことも多いのですが、そのひとつに「クロソイド曲線」と呼ばれるものがあります。

これは道路や鉄道の線形設計に用いられる数理曲線のひとつです。曲率が距離に比例して変化するため、直線から円弧への接続が滑らかに行なえるという特徴があります。そしてこの特徴によって、車両の走行時に急激な方向転換を避け、乗り心地や安全性を高めることができるのです。

では最初にクロソイド曲線の式とグラフについて簡単に説明していきましょう。

クロソイド曲線は、イタリアの数学者アーネスト・チェザロにより名付けられました。この「クロソイド」という名前は、ギリシャ神話に登場する人間の運命の糸を紡ぐとされる女神の名前「クローソー」が由来だといわれています。扱う分野によっては「オイラー螺旋」や「コルニュ螺旋」という呼び方もされます。

このクロソイド曲線ですが、前述のとおり道路を安全に運転するために、道路づくりにも組み込まれています。

自動車を一定の速度で走らせ、同時にハンドルを一定の割合でゆっくり回し続けたときの軌跡がクロソイド曲線です。これは高速道路のインターチェンジやジャンクションなどでよく見られるループ形状の道路を走ったときに自然に無理なく曲がることができるという現象に繋がります。

ではもう少し深く説明していきましょう。道路のカーブが直線から急に円弧区間に入る、カーブ区間に入った途端にカーブに合わせてハンドルを操作し、カーブを出た途端にハンドルをまっすぐに戻さなければなりません。

しかしクロソイド曲線の区間をはさんだカーブでは、直線区間からクロソイド曲線の区間に入るときは、一定の速度でハンドルを回し続け、円弧に沿って走るときにはハンドルを回したまま固定しておけばスムーズに通過するとこができるのです。この結果ハンドル操作が簡単になり、走りやすい道路になるというわけです。

また走りやすい=事故が起きにくい安全な道路設計であることに加え、クロソイド曲線を用いて設計することで、道路が流れるような美しい形になります。

このクロソイド曲線を世界で最初に高速道路に取り入れたのは、ドイツが戦後に建設したアウトバーン(高速道路)であり、その後日本では、国道17号線の三国峠の道路改良のときに初めて設置されました。

このように目には見えないけれど、安全な流れ、ストレスのない運転に直結しているクロソイド曲線は道路だけでなく様々な分野で取り入れられています。その一部の例が鉄道の線路や遊園地にある垂直に1回転するジェットコースターなどです。

もしもジェットコースターの縦回転ループを完全に円形にしてしまうと、ループに入った途端、乗客に大きな負担がかかり、むちうちなど状態を引き起こす可能性があります。

つまりクロソイド曲線は、安全には欠かせない曲線ということなのです。

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