
トラック特有の装備は山ほどあるが、中でも助手席側のドアにある小窓の意味を知っている一般的なドライバーはそう多くはないかもしれない。逆にトラックドライバーであれば、その意味と役目を知っていて当然だろう。
では、この助手席側ドアにある小窓は何なのか? そしてどういう意味を持っているのかというのが今回のテーマだ。
まず、この小窓が付いている意味を解説する前に、一般ドライバーはどんな風に考えているかを調べてみた。すると、デザイン上のアクセントや、トラックが横転したときに使う脱出口、外から車内を確認するための窓など様々な意見があった。
ではさっそくこの小窓について解説していこう。トラックの助手席側ドアにある小窓は「安全確認窓」と呼ばれトラックドライバーの間では「アンカクマド」「安全窓」と呼ばれることが多い。またセーフティウィンドーやナビウインドー」という呼ばれ方もあるが、目的は「左側の死角を目視で確認するための窓」だ。
周知のとおりトラックは車体が大きく運転席が高いため、左側面の下部はドライバーから見えづらい死角となっている。 そのため、死角を確認するためのミラーが複数装備されているのだが、それも助手席ドアの下部は見にくい部分でもある。これはトラックに限ったことではなく、一般的なミニバンにおいても接触事故が多い部分である。
特に左折するときに、死角になった助手席ドア下部にガードレールや短い柱のような障害物があって、これを認識できずに助手席ドア部分は傷つけてしまった経験がある人は少なくないはずだ。
このように、死角となる箇所を直接視認できる構造として設けられているのが安全確認窓というわけだ。

この窓の設置は、単なるメーカーの工夫ではなく、道路運送車両法に基づく保安基準にもとづいているのも重要なポイントだろう。
先述のとおり大型トラックなどは運転席の位置が高く遠方はよく見えるものの、トラックの前方に近い部分やトラックのドア下部などが死角になってしまうため、安全確認窓は非常に重要な装備といえるわけだ。
公益社団法人全日本トラック協会が2023年9月に公表した「事業用貨物自動車の交通事故の発生状況」によると2022年中、事業用トラックが左折時に自転車と衝突する事故は431件発生しており、対自転車の事故では最も多い事故類型となっている。
次にこの安全確認窓についてさらに重要な項目を紹介しよう。外から見ると存在感もある安全確認窓は、トラックドライバーにとっても絶好のカスタムポイントであることは間違いない。その証拠に、この部分にプレートやステッカーを貼ったり、アンドンをセットしいるトラックも少なくない。
しかし、ここで注意しなければならないのが視界の確保だ。この安全確認窓は視界の確保が目的であるため、透過率が70%未満のスモークフィルムの使用や金属製プレートなどで窓全体を覆うこと、荷物や作業道具を窓の前に常に置いている状態は違法行為となるので注意が必要だ。

その一方でトラックに詳しい人なら気が付くかもしれないが。海外メーカーのボルボやスカニアなどのトラックには安全確認窓が付いてないのだ。これは生産国による違いだが、海外のトラックを日本で使う時は助手席の窓の上に下を見るための補助ミラーが付き、逆に日本のトラックが海外で販売される時は安全確認窓がふさがれている。

もちろんボルボやスカニアも助手席側の死角は国産トラックと同じなので、この死角を解消するためにカメラやセンサーなど、より先進的な安全システムを搭載している。
このように安全確認窓は飾りやデザインではなく、安全に運行するための必須装備だといえるのがお分かりいただけたと思う。トラックに乗るのは難しくても、一般的な乗用車でも助手席の下部は死角になっていることを確認してみてはいかがだろうか。かなり大きな障害物があってもサイドミラーに映らないということがわかるはずだ。
