
トラックドライバーの競技大会としては、全日本トラック協会が主催するトラックドライバーコンテストが有名だ。同様に、建設機械にも技を競い合うコンテストがある。それが、キャタピラーの主催する「キャタピラー グローバル オペレータチャレンジ」だ。この大会は、2020年に第1回大会決勝がラスベガスで行われて以降、今回が3回目の開催になる。
キャタピラーはグローバルに展開している建設機械メーカーであるから、そのユーザーも全世界に及ぶ。そのため、本大会の予選は各国にあるディーラーが主催して実施。そこで勝ち抜いた選手たちが、地域大会(カナダ南北アメリカ地区・ヨーロッパ地区・アジア地区)に進出することになる。今回秩父で行なわれたのは、アジア大会なのだ。

2025年10月29・30日の2日間に渡って開催されたこの大会には、日本を始めとしてインド・中国・オーストラリアなど、アジア太平洋地域から19名の強者が終結した。会場となったのは、日本キャタピラーの「D-Tech Center」。通常はユーザーに同社製品のデモンストレーションをするほか、社内教育などを行なっている施設だ。
約30万㎡の広大な敷地に、屋外施設として土木現場に似せたデモエリア・デモ走路・トレーニングエリアがある。屋内施設としてはホール・研修室・整備工場のほか、屋外エリアを安全に見学できる観覧席が設けられている。この屋外エリアを利用して、油圧ショベル・ブルドーザー・ホイールローダーを使用した、3つの競技が行なわれたわけだ。

油圧ショベルの競技ではCat320が使用され、正確な溝掘削を競った。掘る穴の目標は、深さが600㎜で長さは4500㎜。溝の傾斜は、25%だ。ブルドーザー競技はCat D4を使用。指定されたコースを用意された障害物に触れないように走行し、最後はブレードで押土均しを行う。小型ホイールローダー競技は、Cat938を使う。正確な量の砂利をすくい、スラローム走行を行うといったものだ。

さらに、いずれの競技にもゲーム課題が用意されている。ショベルカーでは、バケットを操ってボールを缶に入れる「ボールチャレンジ」。ブルドーザーでは、タイヤをブレードで押してゴールに入れる「タイヤサッカー」と、ひもに通された筒をブレードで押して移動させる「ラビットチェイス」。ホイールローダーでは、パイロンの上に置かれたボールをバケットで押して落とす「ボールチャレンジ」である。いずれも、複雑な操作を必要とする現場ですらあり得ないシチュエーションで、オペレーターはクリアするのに苦労をしていたようだ。

2日間の熱戦を制したのは、日本から参加した新潟県の宮嶋学生氏。続く2位にはオーストラリアのShane Poole氏、3位は同じくTimothy Lamb氏であった。3名は、2026年3月にアメリカ・ラスベガスで行われるワールド大会(決勝)に、他の2地域から選ばれた6名とともに出場して世界一を争うことになる。建機も自動化やAI化が進みつつあるといわれているが、こういった職人芸ともいえる高度なオペレーターの技は、大事に継承していって欲しいものである。
