
消防庁発表のデータによると、近年国内での車両火災発生件数は年間平均約4,000件以上にのぼり、非常に多くの車両火災が発生しており、国内では毎日約11件の車両火災が発生している計算になる。もちろん火災車両のなかには一般的な乗用車もあればトラックも交じっているのだが、意外とトラックの車両火災も多いのだ。
そこで、ここではトラックの火災原因について調べてみたのでレポートしよう。
火災の原因には色々あるが、ハンドルの異常、異音、振動でわかるものに、フロントハブベアリングの異常やベアリングの焼き付きがある。これは過熱によるグリスの発火やブレーキフルードの漏れが発火につながるものだ。

またハブとブレーキシューの芯ずれによるブレーキの引きずりも火災の原因だが、それ以外にも脱輪等の重大事故につながる可能性があるため注意したい。
さらに駐車ブレーキの戻し忘れで過熱し発火するパターンや、エンジンのオーバヒートでヘッドカバーのシールからオイルが漏れ、 排気マニホールドフランジ部に付着して発火とうこともある。
このほかにもエアクリーナーが火種を吸い込んだ結果、エレメント、吸気ホースなどに続いてキャビンまでが焼ける事象もある。


ブレーキ関係以外だとクラッチも火災の原因となることがある。フェーシング摩耗によりクラッチが滑り、その結果ミッションケースやフライホイールハウジングが破損。そこからオイルが噴出し、高温になるエギゾースト関係のパーツに付着することで発火するのだ。
さらに火災の危険性は室内にも原因があるケースだ。キャビン内の追加配線などが過熱して発火すると、ハーネスを伝って火が延焼することも考えられる。またドライバーの不注意から床に落としたライターも火災の原因だ。
ライターを落としたことに気が付かないまま、シートをスライドさせたときに、シートのパーがライターのスイッチを押してしまうことで着火し延焼ということもあるので注意したい。これはヒューマンエラーなので気を付ければ回避できる火災原因と言える。
室内からは直接見えないが、事前のチェックで火災を防げる可能性があるのがタイヤ空気圧不足によるパンクが原因の火災だ。これは走行中タイヤが破損することで、壊れたタイヤのゴムがブレーキホースを破壊してしまうので、事前に空気圧チェックは必須と言えるだろう。
このように火災原因はいくつもあるが、実際に車両火災発生時の対応について説明しておこう。

車両火災が発生した場合に最優先すべきは「安全第一」ということだ。安全を確保したうえで、被害及び災害拡大防止のために以下の措置を取ることをお勧めする。
まず速やかに安全な場所に移動して車両を停車させる。この時注意したいのが坂道で停車する場合は、ハンドルを安全側に切って停車することだ。これは火災によって駐車ブレーキが損傷し、解除されてしまうことが考えられるからだ。こうしておけば、車両が燃えながら動き出してもハンドルを切った方向に崖やガードレールがあれば、火災車両が障害物にぶつかることで、炎上中の車両がそれ以上動き出すことはない。
そして駐車ブレーキを掛けたら、エンジンを停止することが重要となる。エンジンがかかったままだと燃料系統や油圧系統に圧力が掛かっているため、オイル類が噴出する可能性がある。
その次はハザードランプ以外の各装置のスイッチをOFFにして、タイヤに輪止めを噛ませることができればひとまずは終了だ。ただし、火災によって過熱したタイヤはバース ト などの危険性があるため、火元に近いタイヤではなくなるべく高温の場所から離れたタイヤに輪留めを噛ませるほうがよい。
実際に車両火災の現場に遭遇してしまうと、火力の強さに冷静さを失いがちだが、二次災害を引き起こさないためににも、こうした対処方法を覚えておいて損はないだろう。

