
デコトラまたはアートトラックといえば、映画『トラック野郎』がそのルーツだといわれている。ここに登場する「一番星号」を初めとしたトラックは、まさにギンギンギラギラという形容がぴったりのド派手なデコトラばかり。この華やかさは、高度成長期のなかで何もかもが大らかだった時代に生まれた、イケイケの風潮によるものだったといえるのではないだろうか。
現在は道路運送車両法の改正や厳格な運用などに加えて、出荷元や着荷先の企業がそういったトラックの出入りを制限することも多く、以前のようなギンギンギラギラのデコトラは影を潜めたといわれている。とはいえ、同好の士は決して姿を消したわけではない。派手な装飾一辺倒だったものが、細かなところに手をかけるといったように変化をしてきたのである。
そのようななかで、デコトラドライバーに今でも高い人気を誇るアイテムは、「アンドン」と呼ばれる照明用パーツだ。独自の形を持った箱のなかに、光源として蛍光灯やLEDを設置。正面にはアクリル板をはめ込むことで、看板のような電飾パーツに仕上がるのだ。アクリル板には「御意見無用」などの言葉や、ちょっとした図柄などを施すことも多い。
デコトラは普通のトラックが付けていないようなところに電飾を配することで、個性を強調して完成度を高めている。ただ、以前のように電飾の主張が強すぎると、派手な印象を与えてまわりに忌避感を持たれかねない。そこで、「アンドン」の場合は正面をアクリル板ではなくステンレスなどにして図形を抜き、その部分を光らせるようにするといったドライバーが増えてきている。これなら、スマートな印象を与えることができるので、仕事用のトラックにも採用しやすい。
このように、装飾に図形を用いる例が増加している。もちろん、アートは個性だからどのような図形を用いても構わないのだが、やはりある程度人気のあるものは限られてくる。なかでも「菱形」はその代表格だ。どのような場所に配しても違和感のない無難な形状であることが、長く高い人気を得てきた理由だろう。ただ、この形は反社会的勢力のひとつが持つ「代紋」と似ており、それをかっこよいと考えて採用するドライバーもいるそうだ。

次に多いのが、「ダイヤ型」だといわれている。「菱形」との違いは、辺にアールがついているところ。わかりやすくいえば、トランプのダイヤの形である。「菱形」よりおしゃれっぽいところがよいそうだ。その次は「星型」。これは、「一番星号」で採用されたことが影響しているようだ。もっとも、「星型」はデザインとして一般でも人気が高く、どこに配しても違和感がない。親しみやすい図形といえるのかもしれない。


同様の理由で「ハート型」も根強い人気がある。ただ、クールなイメージを持つ他の図形と違い、かわいらしいといったイメージが強いので、ワンポイント的な使い方をされることが多いようだ。厳ついなかにも、ちょっとおちゃめな感じを演出する図形である。このほかには、純和風な「扇型」なども好むドライバーが多い図形だ。このように、デコトラは様々な図形で飾られており、それが独特の雰囲気を醸し出している。まさに、ドライバーのセンスが浮き彫りになるアイテムだといえよう。
