繊細な競走馬を運ぶ馬運車って普通のトラックやバスと違うの?

高速道路などでたまに見かけるのが馬運車。車体に馬の名前が書かれていることもあるので、遭遇するとついつい確認してしまうことも多いはず。この馬運車だが、名前のとおり馬を運ぶときに使用されるのだが、競走馬を運搬するという特殊な用途だけに、その中身などはあまり知られていない。そこで今回は馬運車につて解説していこう。

まず馬運車は、JRA(日本中央競馬会)が直接保有しているのではなく、競走馬の輸送を専門に扱う会社の持ち物なのだ。

そして馬運車の運行はこんな感じになる。トレーニングセンターから競馬場への輸送なら、厩舎で競走馬が積み込まれる。夏の北海道開催などの場合はフェリーを利用した海上輸送も行なわれるが、競馬場までの輸送は基本的に陸路だ。

このように馬の輸送につかう馬運車だがその中身を解説していこう。馬運車は大きく分けて、人間の乗車スペースと運転席部分の「キャビン」。それと競走馬の積載スペースで荷室にあたる「馬房」に分かれている。

キャビンは普通のトラックと同じようにドライバーが搭乗するが、さらに厩務員も同乗するのが特徴といえる。厩務員が乗る意味は、輸送中の競走馬の状態に常に気を配り、何か異変があれば即座に対応しなければならないからだ。

このキャビンと馬房は隔壁で仕切られており、後方の馬房の様子を確認するための窓や馬房内に出入りできる扉が取り付けられている。

先ほどキャビンは普通のトラックと同じだと説明したが、運転に関する装置のほかにも独特の装備やスイッチがある。例えば馬房内の馬の様子が常時映し出されるモニターだ。これはドライバーと厩務員用に取り付けられたモニターが2台ある。

次に馬房だが、これは1台につき1頭ではなく、前3頭+後ろが3頭で、全部で6頭の馬を積み込むことができる。さらに馬はすべて進行方向を向いて積まれるのだ。

馬を積み込むときは、馬運車後部にある乗降口を開け、タラップを地面に下ろし緩やかなスロープを作って馬を車内まで誘導する。その際も馬がスロープを踏み外して落ちないように両側には転落防止板が備え付けられるという流れだ。

馬は車に積み込まれると目的地に着くまでは立ちっぱなしとなるため、立ったまま寝ることもある。そのため馬にはストレスを与えないよう、馬房内の環境は馬にとって最適に保たれているのだ。例えば、馬は暑さに弱い動物なので、夏場は人間には肌寒い20℃くらいの温度に馬房内のエアコンを設定しているという具合だ。

馬房の温度の管理だが、換気扇や窓の開閉によって、外となかの空気を混ぜて馬房の室温をコントロールしている。車体側面に窓がいくつもあるのは、外気を取り込むためのものなのだ。

生きている馬を運ぶという特殊な用途である馬運車は、見た目のかたちは一見観光バスのような四角いものが多い。これはトラックシャシーにバスのボディを載せたタイプの車両が多いからだが、最近では衝突安全基準の点などから、ボディ強度の高いトラックキャビンがベースになった車両も増えつつある。

また輸送される競争馬は高価な上にとても繊細であるため、運転中にも細心の注意が必要となる。急のつく運転は厳禁なのはもちろん、車の急な動きで馬がお尻をついたり、不用意な力が加わって足を傷めたりすることはあってはならないのだ。

最後によくある勘違いについてひとつ解説しておこう。冒頭で車体に馬の名前が入っていると書いたが、そのクルマに書かれた名前の馬が積み込まれていると思われがちだが、じつはそうではなく、ダービー馬やG1勝利馬の名前をデコレーションとして入れることで、厩舎の功績を称え、宣伝する役割を持っているというわけだ。

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