物流の原点 飛脚って凄かったんだ!というハナシ

日本の物流の原点とも言えるのが「飛脚」だ。この飛脚は現代の宅配便や郵便システムの礎を築いた彼らは、単なる走る運び屋ではなく、驚くほど組織化されたプロフェッショナル集団だった。現代では存在しない飛脚だが、当時の時代背景や歴史を深堀していくと、非常にシステマチックに作られていたことがわかる。そこで今回は物流の祖である飛脚について説明していこう。

「飛脚の始まりと種類」

飛脚の歴史は古く、7世紀頃の駅制まで遡る(駅制とは公用(政治や軍事)のために、主要な道路に一定の間隔で駅(うまや)を置き、人や馬を準備させた交通システム)。これは

現代の「鉄道の駅」のルーツでもあるが、当時は一般の人が利用するものではなく、あくまで国のネットワークを支えるためのインフだった。

こうした状況の中で飛脚というスタイルが確立されたのは江戸時代で。主に3種類に分かれていた。それが継飛脚(つぎびきゃく)と大名飛脚(だいみょうびきゃく)町飛脚(まちびきゃく)だ。

それぞれには以下のような違いがあった。

「継飛脚」は幕府公認で公文書を運ぶ最優先の飛脚。

「大名飛脚」は各藩が独自に抱えた飛脚。江戸屋敷と国元の連絡用。

「町飛脚」は一般庶民や商人が利用。現在の「郵便・宅配便」に最も近い存在。

こうして生まれた飛脚だが、驚くべきはそのスピードとシステムだった。当時の飛脚は江戸から京都までの約500kmを、並便と呼ばれる最も一般的で安価なサービスで10日〜12日。非常に高額な仕立て便の場合は3日〜4日で走り抜けた。当時はクルマなどがなかったが、考えられないようなスピードで物が運べたのはリレー方式の採用があったからだ。約10〜12kmごとに設置された宿場で、次のランナーへと荷物を受け渡すリレー方式をとっていたことにより、24時間休むことなく荷物を動かし続けることが可能だったというわけだ。

そんな飛脚たちの姿と言えば、多くの人は「ふんどし姿に脚絆(きゃはん)」というイメージのはずだが、非常に理にかなった機能的なスタイルだったと言える。

飛脚棒と呼ばれる荷物を括り付けた棒を肩に担ぎ、左右の手でバランスを取り、その棒の先に鈴をつけ、「飛脚が通るぞ!」と周囲に知らせていたのだ。この鈴の音が飛脚の通過を知らせ、この音を聞くと街道の人々は道を譲ったと言われている。また夜間には御用提灯を使用して暗闇を走り抜けた。

そして、こうした飛脚のシステムは、明治時代に入り「郵便の父」と呼ばれる前島密によって近代郵便制度へと引き継がれたのだ。

ここまでの説明で飛脚が現代の物流に通じる部分が非常に多いことがお分かりいただけたと思う。それは飛脚というサービスは現代の感覚で見ると「超高級な特急便」から「リーズナブルな共同配送」まで、非常に細かく設定されていたことでも理解できる。

では、実際に飛脚はどれくらいの料金で頼むことができたのかを説明しよう。

江戸時代の運賃は、現代の宅配便よりもタクシーのチャーターに近い感覚だった。特に先述した仕立便は貸切便なので考えられないほど高額だったのだ。

具体的には江戸〜京都間(約500km)の料金目安だが、並便(普通)なら約4,000円〜6,000円、定期便は複数の荷物をまとめて運ぶため、3万円前後で7日以内に届けることを保証していた。もっとも高額な仕立便(貸切)であれば、3~4日で届くものの、その金額は約20万〜75万円もかかってしまうのだった。

仕立て便は裕福な商人や、緊急を要する大名などが利用したいっぽうで、一人で払えない場合は、複数の商店で金を出し合い、割り勘にして出すこともあったようだ。

しかし、飛脚として走っていた「走卒(そうそつ)」たちの収入は、実はそれほど高くなかったようだ。多くの場合は一仕事いくらの歩合制か、飛脚問屋に雇われた固定給+チップ」のような形であり、現代の貨幣価値で年収300万円〜400万円程度だったと言われている。

では、最後に飛脚がどんな荷物を運んでいたのかをお教えしよう。飛脚が運んでいたのは、主に情報とお金だった。現代のように重量物を運ぶようなことはなく、重いものは船や馬が担当していた。メインで運ぶのは手紙や文書で、商売の注文書、遠く離れた家族への便り、幕府の公文書などがそれにあたる。このほかにも、薬、印鑑、宝石類、工芸品など、軽量で高価なものも割合としては少ないがあった。

まさに物流の原点とも言える飛脚だが、やはりそこには飛脚への「信頼」が大きくかかわっている。もし荷物を紛失したり、予定より大幅に遅れたりした場合は、飛脚問屋が運賃の数倍の賠償金を払うという厳しいルールもあった。

このように長い時間の中で、飛脚のシステムは形を変えて現代に繋がっていることを考えると、なかなか面白い歴史とだと思わないだろうか。

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