港湾エリアはスペシャリストの集まる場所だった

港湾エリアは、巨大なメカを操るスペシャリストや、船の安全を守るプロフェッショナルがひしめく独特な世界と言える。しかし、一般的に具体的な仕事内容はなじみの薄いのもたしかだ。プロフェッショナルと呼ばれる多くの人たちによって、成り立っている港湾エリアにまつわる特殊な職業を紹介していこう。

「水先人」

港湾の職業の中で「最高峰」とも言われるのが、水先人と呼ばれる船のナビゲーター。巨大な外国船などが港に入る際、その港の地形や潮の流れを熟知したプロとして船に乗り込み、船長に代わって操船の指揮を執る職業だ。国家資格が必要で、その専門性の高さから年収が非常に高いことでも知られている。

「ガントリークレーン運転士」

港のシンボル、巨大なクレーンを操る人たちのこと。高さ50メートル以上の運転席から、足元のガラス越しにコンテナを吊り上げ、船やトラックへ積み込みを行う。常に真下を向いて作業するため、首や腰への負担が凄まじい肉体派スペシャリストという一面もある。強風で揺れるコンテナを数センチ単位でピタッと止める技術はまさに神業レベル。

「ラッシング業者(ラッシャー)」

船の上でコンテナを縛り上げるプロ集団。船に積まれたコンテナが崩れないよう、重い鋼鉄製の棒(ラッシングバー)を使って、コンテナを船体に固定する。船の出港時間を厳守しながら、何百、何千というコンテナを、雨の日も風の日も、制限時間内にすべて手作業で固定している。

「綱取り(ラインマン)」

船を岸壁に繋ぎ止めるプロ。船から投げられる巨大なロープ(係留索)を受け取り、岸壁にある「ボラード(車止めのような突起)」に引っ掛けて固定する。数万トンクラスの船のロープは、太さも重さも想像を絶するほど重い。失敗すれば船が流されたり、ロープが切れて跳ねたりする危険もある。

「検数人(チェッカー)」

物流の「目」となる、公正な第三者という立場。荷物の数に間違いがないか、傷がないか、コンテナの番号が正しいかを一点一点チェックし、証明書を発行する。中立な立場なのは、船会社でも荷主でもないからであり、荷物が正しく届いたことを証明する、港の裁判官のような役割とも言える。

「潜水士」

港の見えない部分を支えてくれる仕事。岸壁の下が腐食していないか、船の底に異常がないか、海の中に潜って調査や補修を行う。港の海は視界が非常に悪いことが多く、ほぼ手探りで溶接や点検を行うことも。

「バンカー」

トラックのガソリンスタンドとは規模が違い「油槽船(ゆそうせん)」という給油専用の船を操り、巨大なコンテナ船の横にピタッとつけて燃料を補給する仕事。船の燃料(重油)は粘り気が強いため、温めてサラサラにしながら送り込むという特徴がある。一度の給油で数千万円、数億円分の燃料を扱うため、まさに港のガソリンスタンド店長のような存在。

「海事鑑定人(サーベイヤー)」

港でトラブルが起きた時に登場する特殊な仕事。「荷物が濡れていた」「コンテナの中で荷崩れしていた」という際、その原因がどこにあるのか(積む前か、航海中か、港での作業中か)を科学的・法的に調査する。こうした職務であることから、船の構造から気象、物理学まで熟知しており、彼らの出す「鑑定書」が保険金の支払いや裁判の決定的な証拠になる。

「ステブドア)のフォアマン」

「ステベ」とは荷役請負業者のことで、その現場監督がフォアマンと呼ばれる。船の上、岸壁、倉庫のすべての作業員に指示を出し、巨大なパズルのような荷役作業を統率している。船を1時間長く停泊させると数百万円の損失が出る、と言われるほど金がかかる港湾だが、刻々と変わる天候やトラブルを瞬時に判断し、最短時間で作業を終わらせる全権を握る。

「燻蒸士(くんじょうし)」

海外から来た荷物に、外来種や害虫が混じっていないかをチェックする仕事。植物防疫法に基づき、コンテナの中に特殊な毒ガスを注入して、アリやダニ、病原菌などを根絶する。

「タグボートの船長」

自分の船より何十倍も大きいコンテナ船を、「鼻先」で押したり引いたりして操る。巨大船は自分では小回りが利かないため、タグボートが横から押して「縦列駐車」を手伝う。1万馬力以上のエンジンを積んだ小さな船を操り、巨大船とぶつかる寸前の距離でコントロールしている。

「船舶通関士」

港に届いた荷物を「日本国内に入れても良い」という許可を税関から取る、貿易の法律家のような存在。世界中から届く複雑な荷物の「関税率」を正しく計算し、膨大な書類を作成している。 いずれも港湾エリアならではのなかなか珍しい仕事だが、こうした多くのプロフェッショナルがいるからこそ、物流のスタート地点である港は稼働することができる。

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