今の若い人は、「デコトラ」といってもイメージできないかもしれない。それだけ、街中で満艦飾のトラックを見かける機会が少なくなったということだろう。あのド派手なトラックは、1970年代後半の映画「トラック野郎」によって、全国区に押し上げられた。その前身ともいえる「トラックを派手に飾る」という文化は、高度成長期に車両の補強的な意味合いから始まったようで、次第にエスカレートしていったとされている。その後、「トラック野郎」に出てくるデコトラにあこがれるドライバーが増え、それが基本形となって様々な飾りが生み出され、ブームが広がっていったということだ。

しかし、それは長くは続かなかった。なぜなら、道路運送車両法や道路交通法などが厳しくなったことで、合法的な改造の範囲が狭くなったからである。加えて、トラックドライバーの収入が減少。逆に、デコトラの車両費・改造費・維持費は高騰の一途を辿った。また、荷主・着荷先のデコトラに対する忌避感なども重なって、外観的にド派手な車両は次第にその数を減らすことになったのだ。

とはいえ、デコトラ文化が完全に衰退したわけではない。結論からいうと、見た目の派手さではなく美しさを求めるように変化したのだ。もちろん、以前のデコトラも箱絵や電飾などは多くの人が美しいと思っただろう。しかし、今風のデコトラは、もう少し実用的なところに「美」を求めているのだ。
たとえば野菜の運搬の場合、強度や見た目を重視してボディをオリジナルで作るのである。とくに大型トラックのウィングや冷凍車であれば、その製作費用は優に1000万円を超えるという。さらに、燃料タンク・補器類・フレームなどについても、こだわったオリジナルパーツを搭載するドライバーが存在する。

デコトラを前方から見たときに、まず目につくのが改造されたバンパーやフロントデッキだが、これらを見かけなくなったことがデコトラ衰退といった誤解につながっているようだ。現在はこういった飾りではなく、不必要な部分をスムージングして埋めるとかメッキをかけるなど、詳しい人でなければわかないようなところを改造している。

こういった傾向は、必ずしも悪いことではない。確かに、ド派手なデコトラは人目を引くしカッコよさもある。しかし、コンプライアンスが厳しい現代社会で、仕事用トラックとして生き残るのはかなり難しいといえよう。また、荷主・着荷主の立場からもド派手なトラックより、美しいトラックに荷物を運んでもらった方がよいだろう。トラックをきれいに保っているドライバーなら、荷物も丁寧に運んでくれると考えるのではないだろうか。

このように、デコトラは派手さから美しさにシフトチェンジする流れが定着しているが、以前のド派手なトラックが絶滅したわけではない。仕事車としては使い難くても、プライベート用トラックとして所持するマニアが増えているのだ。車両単価が高く維持費もかかるが、全国には多くの同好の士が存在する。世界にも知られる日本文化として、ぜひともその火を守っていってもらいたいものである。

