自衛隊退役者をトラックドライバーにスカウト!?

日本国民を守るために日々業務に精励する自衛隊員だが、若い退役者の中から民間の大型車両運転手に転職する例が多いという噂がある。確かに、自衛隊員は入隊中に様々な資格の取得が可能で、陸上自衛隊では大型運転免許を取る例も多いとされる。しかし、それがすなわち隊員の退職・転職を促しているわけではない。若い隊員が退職する理由には、自衛隊独自の雇用形態があるのだ。

自衛隊員は、高級幹部である「一佐(旧軍の大佐に相当)」の定年が58歳。民間に多い60歳定年から見ればやや早いように思うが、兵士に相当する「士(二士・一士・士長の3階級)」であれば任期制で、2年~3年ごとに節目を迎えるようになっている。ここで退職を選択する隊員が、相当数存在するのである。彼らはその後、自力で次の就職先を探す。その際に、取得している資格が有利に働くわけだ。

自衛隊員は厳しい規律と訓練を経験しているから、民間の運輸事業者からすれば新人教育がほとんど必要のない有用な人材といえる。しかも大型運転免許のような資格を所持しているのだから、即戦力としても大いに期待が持てるのだ。しかし、彼らと自衛隊をつなぐパイプがほとんど存在しない。そういった状況を受けて国土交通省が全日本トラック協会と組み、両者をつなぐ橋渡し役を買って出たのである。

背景には、物流の「2024年問題」がある。トラックドライバーの残業が制限され、1人当たりの勤務可能時間が短くなった。ところが、ECショップの増加などから手間のかかる小口配送が増えているのだ。結果、トラックドライバーが不足する事態に陥っているのである。運送事業者も新規募集に注力しているが、なかなか思うに任せていない。

そこで、自衛隊と国土交通省・全日本トラック協会はそれぞれの地方組織単位で協力し、退役予定の自衛隊員と地元運送事業者のマッチングイベントを開催。その1つが、2025年2月に埼玉県上尾市で実施された「大型トラック運転体験会&業界・企業説明会」だ。主催したのは、国土交通省関東運輸局埼玉運輸支局と一般社団法人埼玉県トラック協会である。ここに、同地域近隣の自衛隊各基地などから退職予定者が参加をした。

場所はUDトラックスの本社で、同社からは最新の大型トラック「クオン」などが試乗用に提供されている。参加対象者は陸上自衛隊だけではなく海上・航空自衛隊にも広げられ、大型運転免許の取得も義務付けられてはいない。埼玉県トラック協会役員によると「自衛隊員は厳しい規律の中で過酷な訓練経験していることもあり、職務に対して熱意をもって向き合う姿勢が感じられる」とのことで、所属や免許の取得にはこだわらなかったようだ。

体験会にはトラック協会所属の地元運送会社6社がブースを設け、試乗を終えた隊員との面談を行った。隊員は、試乗前に運輸業界の実情と行政・業界の取り組みについて説明を受けており、ある程度同業界を再就職先として検討し始めている。さらに最新大型トラックの試乗を行ったことで、その魅力も感じていたようだ。能力のある人材が、こういった機会を通じて運輸業界に興味を持ってくれれば、「物流の2024年問題」解決の一助になることは間違いないのではだろうか。

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