筆者がトラックや物流の現場を取材しに行くとき港湾エリアや埠頭に出向くことが多い。もちろんそれには理由があって、数多くのトラックを一か所で観察できることに加え、実際の物流現場がどのように動いているのかを肌で感じることができるからだ。それも曜日や時間帯問わず行けば必ず何かしらの発見がある、それが港の魅力でもあり、なんか言っても飽きることはない。

場所によっては公共交通機関を使ってアクセスするには不便な場所もあるため、もっぱら自分の車で訪れるのだが、どのエリアへ行っても必ず探しまわるものがある。それは飲食店とコンビニ、自動販売機など、普段の生活には欠かせないものばかりだ。そして港湾エリアには、普段なら当たり前のこうしたものがあまりない。もちろん物流の拠点という場所柄仕方のないことなのだろうが、ランチタイムにふと訪れた時お腹が減ったとしても「ちょっとあの店で食事していこう」とはならないのだ。いまさら言うまでもないが、埠頭が飲食店不毛の地というのはあながち間違いではない。そんな中、一般の人がなかなか立ち寄らないような店があることも事実。そして今回筆者がふと目に付いた看板で不思議だったの「海員生協」という文字だ。

外観は普通のコンビニや売店のような佇まいだったが、わざわざ海員生協という文字を大きく掲げているからには何かあるのだろうと早速近づいてみた。海員と書かれているので、船や港などの関係者のみが使える施設なのかと思っていたが、実際にはタクシーの運転手や普通の人たちも店内に入っていたところを見ると、誰でも使用できる施設であるようだった。

ここで海員生協について説明しておこう。全日本海員生活協同組合は、主に船員(海員)とその家族、および海運・水産関係者の生活を支えるために設立された職域生活協同組合のことだ。
さらに全日本海員生活協同組合(海員生協)が運営する「エス・ショップ」は、主に横浜・川崎エリアの港湾施設や関連事業所内を中心に展開する、海員・港湾労働者のためのコンビニエンスストアや購買店舗、あるいは売店機能であり、食品、飲料、日用品などの販売を通じ、船員や湾岸で働く人々の生活をサポートする重要な役割を担っているのだ。
基本的には全日本海員組合の組合員とその家族が対象だが、多くの店舗では地域住民などの一般利用者も買い物が可能。ただし、組合員になることで割引や配当などの特典が受けられる仕組みになっている。
このような海員生協のレストラン(イメージ的には食堂と言った方がぴったりだろう)の券売機を眺めているとやはり最もリーズナブルなものはシンプルなかけそば、その他カツ丼、ラーメン、カレーに丼物と充実のラインナップとなっている。

そしてその食堂の隣にある売店だが、こちらも何か特別な施設というわけではなく、普通のコンビニのような品揃えに加え、港にちなんだアイテムもちらほら売っていることが確認できた。
ちなみにだがこの食堂は大手のグルメサイトにも様々な人がレビューを書いている。ふ頭内という特別な場所だけあって、わざわざこの食堂での食事を目当てに遠方からやってくる人も一般の少なくないようだ。営業時間は朝6時からと、物流の拠点らしい朝早い開始となっている。

実際にこの食堂の前で少し様子を観察していると、売店や食堂に出入りするのがいろいろな職業の人であることがわかる。あまり広くない店の前の駐車場に止まっているクルマを見ると、営業車であったりタクシーであったりとその仕事のバリエーションの多さが感じられる。またちょっと離れたところに大型トラックを止めて入店してくるドライバーも後を絶たなかった。

この海員生協の隣にはシーメンスクラブというレストランもあるのだが、そこは港で働く人たちがやってくる、というよりは純粋にランチを楽しみたいと人たちが集まるイメージが強かった。
このエリアでランチを食べようと思うと車を少し走らせれば、中華街や山下公園など観光エリアに行くこともできるが、やはりそこは港で働く人たちと同じ飯を食う!というのが何とも言えぬロマンなのだ。

近くに行ったついでに、ぜひ食堂で港メシを味わってほしいと言いたいところだが、普通ではなかなか立ち寄らないエリアであることも確かなので、興味のある方は時間を作って訪れて欲しい。
「海員生協本牧レストラン」
神奈川県横浜市中区本牧ふ頭3-1
