日本の物流業界は今、深刻な「2024年問題」の渦中にあるといってよい。労働時間の制約とドライバー不足が深刻化する中、配送効率の向上は喫緊の課題である。その解決策の一翼を担う存在として注目されているのが、2023年7月の道路交通法改正により誕生した「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」なのだ。

特定小型原付の最大の利点は、16歳以上であれば免許不要で運転でき、ヘルメット着用が努力義務であるというハードルの低さだ。また、一定の条件(最高速度6km/h以下に切り替えるなど)を満たせば歩道走行も可能になる。すなわち、台車・リヤカー・自転車よりも機動力を持ち、バイク・軽トラよりもコストを抑えられて、条件が整えば高校生でも戦力にできるということだ。


都市部における配送で、トラックドライバーを悩ませている問題の1つが駐車スペースの確保である。特定小型原付であれば、それを積載したトラックを駐車場などに停車させ、そこから複数人で小型モビリティに分乗して各戸へ配送すれば、配達の効率化と路上駐車のリスク低減が実現できる。
また、台車を用いた徒歩配送と比較したときに、電動モビリティによる移動ならドライバーの疲労を劇的に抑えることができるだろう。とくに坂道の多い地域や、車両の進入が困難な狭隘路においては、その機動力は大きな武器となる。重い荷物を苦手とする配達員にとっても、配達地域を選ばなくて済むようになるかもしれない。

ただ、物流の仕事は機械にも相応の負荷がかかる過酷なところがある。特定小型原付が物流の第一線で「使える道具」となるためには、以下の条件を満たす必要があるだろう。
・積載能力と耐久性の向上
現在の市場に出回っている特定小型原付の多くはレジャー用であり、物流用途を想定していない。配送現場では、重い荷物を安定して運べる「3輪タイプ」や、大容量のコンテナを装着できる堅牢なフレームが求められる。また、1日中稼働に耐えうるバッテリー容量と、予備バッテリーとの迅速な交換システムも必須だ。
・「特小」特有の交通ルールの浸透
免許不要という手軽さは、裏を返せば「交通リテラシーの欠如」を招くリスクを孕む。とくに最高速度20km/hという仕様は、一般道では自動車から見て「遅すぎる存在」だ。配達員は所属会社で交通教育を受ける機会を設けられるが、一般ドライバーは難しい。「特定小型原付の特性」を一般に周知させる、何らかの啓発活動が必要である。
・トラックとの「親和性」を考慮した設計
ラストワンマイルの起点は、トラックの荷台を利用することが前提だ。トラックから特定小型原付へ荷物を積み替える際の動線、車両自体の車載しやすさ、車内における充電設備など、これらをシステムとして統合して初めて現場のワークフローに組み込むことができるのだ。

特定小型原付は、ラストワンマイルモビリティとして大いに期待のできる存在だ。トラックドライバーにとって、この新たなモビリティは「仕事を奪うもの」ではなく、過酷な労働環境を改善するための「相棒」となる可能性を秘めている。ハードウェアの進化とルールの習熟を同時に進めることができれば、日本の物流とって強い味方になってくれるのではないだろうか。


