コイル輸送はなぜ難しい?「鉄砲積み」と「眼鏡積み」に隠れたプロの技術

保存版|何トンもの鉄コイルを安全に運ぶためには、積み方、固定、重量制限、通行許可まで、普通の荷物とは違う注意点がある。

コイル材は“丸い鉄板”ではなく重量物

トラックやトレーラーで運ばれている大きな金属のロール。これは一般的に「コイル材」と呼ばれる。薄い鋼板などをロール状に巻いたもので、自動車、建材、家電、機械部品など、さまざまな製品の材料として使われている。

見た目は単なる丸い金属の塊に見えるが、実際にはかなり重い。小さなものでも1〜2トン級、大きなものでは十数トンになることもあり、大型のコイルでは19トンに達するものすらある。

そのため、コイル輸送では「積めるかどうか」だけでなく、「安全に固定できるか」「重量バランスは適切か」「通行できる道路か」まで考える必要がある。

なぜコイル輸送は危険なのか

コイル輸送が難しい最大の理由は、重さと形にある。コイルは丸いため、荷台の上で動き出すと止めにくい。急ブレーキ、カーブ、段差、路面の振動などが重なると、わずかな緩みが大きなズレにつながる。

しかも、コイルは一点に大きな荷重がかかりやすい。偏った積み方をすると、車両の安定性にも影響する。貨物自動車運送事業者には、偏荷重が生じないように積載し、荷崩れや落下を防ぐための必要な措置を講じることが求められている。

つまりコイル輸送は、単にワイヤーやチェーンで縛ればいいというものではない。荷重のかかり方、固定具の位置、コイル同士の接触、表面の傷つき防止まで含めて考える必要がある。

「鉄砲積み」と「眼鏡積み」の違い

コイル輸送でよく使われる言葉に、「鉄砲積み」と「眼鏡積み」がある。

鉄砲積みは、コイルの穴が車両の前後方向を向くように積む方法。前から見ると、筒を前後に向けて載せているような状態になる。一方、眼鏡積みは、コイルの穴が車両の左右方向を向く積み方で、側面から見ると丸い穴が並んで見える。

どちらもコイルを立てた状態で運ぶ方法だが、荷台の構造、固定方法、積載する本数、荷主の指定などによって使い分けられる。寝かせて運べば安定しそうに見えるが、コイルは層状に巻かれているため、寝かせることで内側の層に変形が出るおそれがある。元記事でも、寝かせた状態での輸送は変形や落下のリスクがあるため避けられる。

通行許可が必要になるケースもある

コイル輸送では、車両そのものの大きさや重さにも注意が必要だ。道路には、幅、長さ、高さ、総重量などの一般的制限値がある。国土交通省の資料では、一般的制限値として幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m、総重量20tなどが示されている。これらをひとつでも超える車両は特殊車両となり、通行には許可が必要になる。

また、高速自動車国道や重さ指定道路では、車両の長さや軸距に応じて総重量の上限が最大25tとなる場合もある。

最近は、特殊車両通行許可だけでなく、登録済みの車両が通行可能な経路をオンラインで確認する「特殊車両通行確認制度」も使われている。制度やシステムの改良も進んでおり、重量物輸送では、積載技術だけでなく事前のルート確認も重要になっている。

固定と確認こそがプロの仕事

コイル輸送では、コイル台、木材、ゴム、ワイヤー、チェーン、ラッシングベルトなどを使い、荷物が前後左右に動かないように固定する。表面に傷をつけないため、保護材や梱包を使うこともある。

重要なのは、出発時に固定して終わりではないことだ。走行中の振動で固縛が緩むこともあるため、途中確認も欠かせない。とくに重量物は、一度動くと車両側で受け止めることが難しい。だからこそ、コイル輸送は経験と確認作業がものをいう世界なのである。

道路で見かける金属コイルを積んだトラックは、ただ大きな荷物を運んでいるだけではない。その背後には、重量、形状、積み方、固定、法規制まで計算した、プロの輸送技術が詰まっているのだ。

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