切り花は収穫後も呼吸を続け、水分と養分を消費している。温度が上がれば鮮度低下も進みやすい。そこで産地から市場、花店まで低温を保ち、品種に応じて水を吸わせながら運ばれる。
切った後も呼吸し、水分を失っていく

畑から切り取られた花は、工業製品のような動かない荷物ではない。根から切り離された後も呼吸を続け、蓄えている糖分を使いながら生命活動を維持している。
呼吸が活発になるほど養分の消費は早まり、開花や老化も進みやすい。さらに、葉や花びらからは水分が失われるため、吸水が追いつかなければ茎が曲がり、花や葉がしおれてしまう。
切り花が弱る原因は一つではない。水あげの悪化、栄養不足、細菌による導管の詰まり、植物ホルモンのエチレンなども品質を左右する。花は箱に入れた瞬間から商品になる一方、生き物としての変化も止まっていないわけだ。
低温で時間の進み方を遅くする

鮮度を保つ基本は、できるだけ早く花の温度を下げ、その状態を輸送中も維持することにある。低温にすれば呼吸や水分消費を抑えやすくなり、開花や老化の進行を遅らせられる。
産地では気温の低い朝夕に採花し、選別や包装を済ませた後、低温施設で予冷する。そこから保冷車や冷蔵設備を使い、市場や物流センター、花店へつなぐのが理想的な流れだ。途中で常温に長く置けば、それまで低く保っていた花の温度が一気に上がり、品質低下を招きかねない。
ただし、低ければ低いほどよいとは限らない。花の種類によって適温は異なり、熱帯性の品種では低温障害に注意が必要になる。切り花物流では、ただ冷やすのではなく、品種に合った温度を切れ目なく保つことが重要だ。
水を与えて運ぶ「湿式輸送」も広がる

切り花の輸送方法には、段ボール箱へ寝かせて運ぶ乾式輸送と、茎の切り口を水や鮮度保持液につけたまま運ぶ湿式輸送がある。
乾式は箱を積み重ねやすく、一度に多く運べる点が強みだ。一方、輸送時間が長くなると水分を失いやすく、花の種類によっては到着時の鮮度へ影響が出る。カスミソウを使った研究でも、乾式輸送では低温・短時間であっても重量が減少し、鮮度が低下した例が報告されている。
湿式輸送では、専用バケットや給水材を使い、花を立てた状態で水を吸わせながら運ぶ。積載効率は下がるものの、バラなどでは低温と湿式を組み合わせることで水分を保ち、花持ちを延ばせることが確認されている。
切り花を枯らさず届けるには、速く走るだけでは足りない。採花後すぐに冷やし、水分を守り、温度変化や衝撃を抑えながら運ぶ必要がある。花を単なる荷物としてではなく、「呼吸を続ける商品」として扱うこと。それが、店頭で美しく咲かせるための物流なのである。
