新車の納期遅れは乗用車だけの問題ではない。トラックは車両本体と架装の二段階で製造され、半導体不足や資材不足、人手不足など複数の要因が重なる。長期化する納期は物流インフラそのものに影響を及ぼしている。
トラックの納期はなぜ長期化しているのか

新車の乗用車を購入する場合、一般的なモデルであれば契約してから概ね1ヶ月で納車というのが、かつてはひとつの目安となっていた。自動車メーカーは計画生産でストックを持ち、成約するとディーラーはそこから車両を確保する。そして、オプション装着や車庫証明などの登録手続きを進めていたため、スムーズな納車が可能だったのである。
しかし、近年その「当たり前」が大きく崩れた。半導体不足やグローバルなサプライチェーンの分断、メーカーの不正問題による減産などが重なったからだ。結果的に納期は半年~1年程度、場合によっては受注停止に追い込まれる車種が急増したのだ。過去を振り返ればバブル景気時代の爆発的な需要増や、中国特需に伴う資材不足といった局面もあったが、現代の納期遅れは需要の急増ではなく「供給側の構造的な不全」に起因している。
だが、事態がより深刻かつ複雑化しているのは、一般の乗用車ではなくトラックをはじめとする商用車である。トラックの納車遅れは、日本の物流基盤を揺るがす問題に直結しかねない。なぜトラックの納期は乗用車以上に長期化し、解決の糸口が見えないのであろうか。その理由は、トラックが持つ生産工程の「二重構造」にあるといってよい。
車両本体と架装の「二重構造」

トラックはメーカーが製造するキャブやシャーシと、そこに荷台や特殊装備を取り付ける架装メーカー(新明和工業・極東開発工業など)での作業という、二段階の工程を経て初めて一両のトラックとして完成する。標準的な平ボディや一般的なアルミ箱車であれば、ある程度セット化された仕様があるため比較的納期は短かい。しかし、冷凍冷蔵車・セルフローダー・ミキサー車、あるいはユーザー独自のオーダーメイド架装になると、キャブシャーシが完成してからさらに数ヶ月単位の架装期間が必要になる。
現在、トラック業界で発生している納期遅延には以下のような3つの理由がある。
①車載電子制御ユニットに必要な半導体の不足がキャブシャーシ側だけではなく、ウイングボディの開閉機構・パワーゲート・冷凍機・クレーンといった架装側の電子制御部にも影響を与えている。
②トラックのボディは、鋼材・アルミ・樹脂部品・各種油圧パーツなどを多くのサプライヤーが供給しているが、それぞれの調達・流通に資材不足などによる滞りが発生している。
③いわゆる物流・製造業の2024年問題の影響で、完成車メーカーや架装メーカーのみならず、数千社に及ぶ下請け部品メーカーの現場で作業員が不足しており、工場全体の稼働率が上がらない。
納期遅れは物流インフラそのものを直撃する

さらに拍車をかけているのが、急速に細分化した物流ニーズと市場予測の難しさだ。SNSをはじめとする情報伝達の高速化に伴い、EC市場の急拡大や配送形態の変化が目まぐるしく起きており、メーカー側が従来のような見込み生産を行い難くなっている。そこにメーカー各社の認証不正問題に伴う生産停止が重なり、減産分を取り戻す目処が立たなくなったのだ。
トラックの納期遅れは、「社会インフラの停止」に他ならない。古くなった既存のトラックを修理しながら使い続けざるを得ず、整備コストの増大や環境性能・安全性能向上への更新遅れといった悪影響も出ている。この問題は、1つの車輌メーカーや架装メーカーの努力だけで解決できる領域を超えており、資材調達・下請けサプライヤーの労務改善・架装工程の標準化など、自動車・物流業界全体が一丸となった構造改革を行わない限り、解決の道は開けそうにない。
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