元大型ドライバーが語る「現代のトラックマナーとプロ意識」

大型トラックの運転には高い安全意識と遵法精神が欠かせない。プロとしての誇りと謙虚さを持ち、周囲への気遣いを忘れない運転が求められる。

日本の物流を、休むことなく支え続ける大型トラック。人々が眠りにつく深夜の高速道路においても、絶え間なく全国各地に荷物を運び届けている。

人間の身体は本来、夜間に睡眠をとる構造になっているとされる。昼間に十分な休息をとったとしても、夜間の疲労回復効果には及ばないのが実情なのだそうだ。そのような生理的に負担の大きい深夜帯に、運転をしなければならない過酷な業務に従事するトラックドライバーに対し、感謝と敬意の念を抱く人も多いだろう。

過酷な環境を支えたドライバーの誇り

今回話を聞いたA氏は、かつて大型トラックのハンドルを握って全国を駆け巡っていたのだという。幼少期からトラックへの強い憧れがあり、自ら望んで物流業界へ飛び込んだのだそうだ。

運ぶ荷物の種類は多岐にわたり、日々異なる目的地へ向かう仕事は相応のたいへんさを伴うものの、大きなやりがいと誇りに満ちていたと振り返る。

しかし、夜間走行の厳しさは想像以上なのだそうだ。とりわけ変化の乏しい高速道路を走り続けていると、強烈な眠気が容赦なく襲いかかってくる。

A氏の現役当時は、速度抑制装置(スピードリミッター)の装着義務化前であり、連続運転時間を制限する「430休憩」の厳格化やETCの普及も十分ではなく、走った分だけ成果につながる時代であった。

そのため、トラックドライバーを取り巻く環境は極めて過酷であったという。不眠不休に近いタイトなスケジュールの中、歌を歌ったり自らに物理的な刺激を与えたりしながら、必死に眠気と闘いハンドルを保持していたそうだ。

失われつつある「気遣い」とプロ意識

現在は第一線を退いているA氏だが、仕事の都合上、今も高速道路を利用する機会が多いという。

道路上で多くのトラックとすれ違う際、当時身につけたドライバー同士の「気遣い」を懐かしく思い出すのだそうだ。ライトの減光やウインカーを駆使したコミュニケーションなど、プロ同士が互いの走行を助け合う独自の作法が存在していた。

かつてはこうした礼節を通じて、相互に敬意を払いながら心地よく走行できる環境があったと語る。

一方で、近年の道路交通における運転マナーやプロ意識の希薄化に対し、強い危機感を禁じ得ないという。

もちろん、大半の大型トラックは安全配慮の行き届いた規範となる運転を実践している。だが残念なことに、時にはプロとしてあるまじき危険な挙動を見せる車両が散見されるのだそうだ。

現在の大型トラックは、速度抑制装置の導入により最高速度が90km/hに制限されている。しかし、車両やメーカーによる微小な性能差により、1km/h〜2km/h程度の緩慢な追い越しが発生しやすい構造となっている。

再加速が容易でない大型車において、速度を落としたくない気持ちは理解できるとA氏は言う。

大型車だからこそ求められる安全運転

だからといって、後方から接近する車両の動静を十分に確認せず、直前に割り込むような車線変更を行ってよい理由にはならない。

ウインカーとほぼ同時に進路変更を開始するような行為は、後続車に急ブレーキを強制し、重大事故を引き起こしかねない極めて危険な挙動である。

法令遵守や安全確認を怠る運転は、プロとしての適性を欠いているといわざるを得ないだろう。

大型トラックは乗用車と異なり、アクセルを踏んでも即座に加速せず、ブレーキをかけてから停止するまでに長い距離を要する。ゆえに、乗用車の運転よりも大きなストレスが伴うことになる。

しかし、プロドライバーには高い遵法精神と安全意識が求められる。

言い換えれば、命に係わる巨大な車両を操って大切な預かり物を運んでいるという重責を、常に自覚しなければならないということだ。

プロとしての誇りと謙虚さを胸に刻み、思いやりを持てる安全な運転を心がけることが切に望まれる。

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