女性トレーラー乗りが挑む北海道1800km輸送。スカニアで駆ける“食”を支える最前線【前編】

日本の食卓を支える物流の現場では、昼夜を問わず大型トラックが走り続けている。なかでも青果輸送は、鮮度と納期がすべてを左右する過酷な世界だ。今回は、北海道で収穫されたばかりの大根とブロッコリーを神戸港まで届ける、総距離およそ1800kmのリレー輸送に密着した。

産地の北海道から荷を積み、フェリーで日本海を渡って福井県・敦賀港へ。そこから陸路で神戸のフェリー埠頭へ向かい、九州行きの輸送へと荷を引き継ぐ。この長距離の大役を、欧州製大型トラクタ「スカニア」で単身担うのが、ベテラン女性ドライバーの長谷川美奈子さんだ。スカニアは日本国内でもトラクタ中心に普及が進む商用車ブランドで、長距離・海上コンテナ輸送などの用途で採用事例が増えている。

収穫期に10kg減る、青果輸送の現場

7月から10月の収穫期、青果輸送は息をつく暇もない。長谷川さんは、この時期だけで毎年体重が10kgほど落ちるという。それでも「ガッツリ稼がせてもらっていますよ」と笑う底抜けの明るさが、過酷な現場を支える大きな武器になっている。

近年は物流業界でパレット輸送が広がっているが、長谷川さんが担当する青果輸送では、1箱約20kgの段ボールを手作業で積み下ろす「バラ積み」が依然として主流だ。腰や肩への負担は大きく、真夏には滝のような汗が流れる。それでも彼女は、敬遠されがちなこの仕事に職人としての誇りを持つ。

父の背中を追ってトラックの道へ

原点は、同じくトラック乗りだった父親の背中にある。幼い頃から自宅にトラックがある環境で育ち、父の手積み作業を手伝いながら育ったという。

一時はピアノ調律師や服飾関係など別の道も志したが、19歳で自ら資金を貯めて運転免許を取得。父と同じ運送会社に入り、4t平ボディ車で20kgの袋物を運ぶ日々を送った。結婚・出産で一度ハンドルを離したものの、子どもの成長とともにルート配送、そして長距離輸送へと復帰。母親としての役割と第一線のドライバー業務を両立してきた。

「女性には無理」を結果で覆す

転機は11年前。牽引免許を取得し、トレーラーによるフェリー無人航送などを担うドレージ業務へ進んだ。当時のドレージ業界は圧倒的な男社会で、就職活動では女性であることを理由に門前払いを受けたことも少なくなかったという。

「女性には無理」「使いにくい」といった偏見に対し、彼女が選んだのは言葉ではなく仕事での証明だった。重い荷物でも弱音を吐かず、巨大なトレーラーを正確に操る。その質と量で結果を積み重ね、偏見を覆してきた。

空になった荷台に達成感

バラ積み仕事の醍醐味は、「すべて降ろし終えた瞬間の圧倒的な達成感」だと長谷川さんは語る。空っぽになった広い荷台を見つめ、汗を拭い、冷たい風を浴びて一息つく。厳しい仕事を知る者にしか味わえない至福の時間だという。

北海道の大地から1800kmの旅が始まる

取材は札幌で合流し、石狩の営業所で冷凍トレーラーとスカニア・トラクタをドッキングするところから始まった。険しい日勝峠を越えて道東・中札内村へ移動し、2カ所の農家で初収穫の大根を積み込む。さらに帯広市の地方卸売市場でブロッコリーを積み増し、今シーズンの「初荷」が満載となった。

大地の恵みを満載したトレーラーは、苫小牧港からフェリーに乗り込み、関西を目指す長大な航海へ。現在、長谷川さんは自身の業務と並行して、後進の女性ドライバー育成にも力を注いでいる。

後編では、フェリー下船後の本州での怒涛の道のりと、彼女の背中を追って業界に飛び込んだ若手女性ドライバーの姿を追う。1800kmの輸送の行方と、次世代へ受け継がれるトラッカー魂にご期待いただきたい。

※本記事および画像は、2022年8月発行の『トラックスピリッツ VOL122』(交通タイムス社刊)の一部を引用・再編集したものです。

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