半世紀を過ぎても色あせない『トラック野郎』熱狂伝説』

〜 1975年夏、熱きデコトラ物語の原点とは! 〜

1975年8月30日、その熱狂は都内の映画館前を軸に巻き起こった。任侠映画に続くヒット作『トラック野郎』シリーズの主役・星桃次郎こと菅原文太さん、そして同作原案を企画し、主役の相棒としても出演したやもめのジョナサンこと愛川欽也さんなど、人気スターたちが「トラックの荷台」に登壇。その熱狂ぶりはなんとも凄まじいものがあった。以来、半世紀が過ぎた今日まで続く「デコトラ」ブームの原点だ。ここでは同作品を監督した故鈴木則文監督の早苗夫人所有の秘蔵写真とともに、当時の人気ぶりを振り返ってみたい。

テキスト)まずはこの写真を見て欲しい。どうだろう、現場の熱気ぶりがヒシヒシと伝わってくるスナップではないだろうか。人気スターを生で見られる、という価値はいつの世も同じだが、ここは映画館前。映画『トラック野郎』第1作「ご意見無用」の公開初日の様子をしっかり収めている。黒山の人だかりの向こうには、よく見ると(なんと)トラックの荷台を舞台に仕立てて、本作主役の3人が登壇している。星桃次郎こと菅原文太さん、やもめのジョナサンこと愛川欽也さん、そして名誉ある第1作のマドンナ倉賀野洋子こと中島ゆたかさんらが、マイク片手に映画のアピールやエピソードを熱きファンたちに贈っている。

日本のモータリゼーションが発達した1960年を経て、オイルショックや排ガス公害などが社会問題になっていた1970年代は、クルマやトラックにはやや肩身の狭い時期だった。

そんなさなか1975年8月30日、デコレーショントラックの運転手が主役の、娯楽映画が完成し公開された。そう、突如として僕たちの目の前に文字どおりキラ星のようにスターが降臨。硬派な役で当時売り出し中の菅原さんを主役に、一方凸凹コンビよろしく、どんなシーンでも愉快さや侘しさを演じてしまう愛川さん。そしてそんなふたりを中心に、デコトラの娯楽作品に仕立てた監督の鈴木則文さん(写真左から4人目)。

上の写真2つは、映画『トラック野郎』の第1作「御意見無用」公開直後の「池袋東映」映画館前でのスナップ。同時公開されている宣伝看板含め、昭和の雰囲気が満載だ。群衆の中にはマスコミカメラマンの姿もあり、当時の人気ぶりがうかがえる。

田中邦衛さん演じるヒール役の「ボルサリーノ」が同シリーズの第2作で登場。白地に縦縞のダブルスーツを纏い、白いダンプの運転手役、という奇想天外なキャラクター設定なども監督であるソクブン・マジックならではだ。

様々なスポーツで語られることに「勝つのは難しい。でも勝ち続けるのはもっと難しい」という格言がある。映画も同じだ。1作、2作のヒットはあっても、10作も続きシリーズとなったタイトルは稀だ。では映画『トラック野郎』シリーズにはどんな魅力が隠れているのか。デコトラ好きにとっては、映出車やその飾り、また「歌麿」に代表されるリアルなトラッカー列伝に惹かれるが、それだけでは堂々10作に連なるヒットは成し得なかったはず。

そこにはソクブンこと鈴木監督のシナリオや演出、そして主役たちの映画にかける意気込みや熱量が欠かせない。「時代がよかったから」ではなく、時代を読み、半歩先んじたからこそ、デコトラファンだけでなく多数の観衆に共感してもらえたのだろう。

ヒットのキーワードは、第1作から以後のシリーズを通して追求した、勧善懲悪、笑い、カネ、オンナ、そしてご当地と人情だ。当時トラックに対するイメージの悪さから、「取り締まり」が厳しくなっていたが、劇中では何度も警察官や権力と戦い、かわし、やり込めるシーンが出てくる。観客はトラッカーでなくても、感情移入し気分がスカッとする。シンプルな「勧善懲悪」だけではなく“人情”を強くアピールした物語だったのだ。また娯楽作品としての演出は見事のひとこと。カッコいい主役が意味不明なギャグでコケたり、カネに対する執着を見せながらもきっぷの良さをアピールする……。

一方、女性の描き方もソクブン・マジックならでは。清楚なマドンナを毎回登場させつつも、あるときは女性の社会進出を先取るかのような姫ドラ役を、意表を突く女優に演じさせているのも注目に値する。

そしてシリーズを通して監督が一番こだわったのが「オトコの生き様はかくあるべし」というテーマだ。日本が高度成長で豊かなになったことと引き換えに失ってしまったモノ。なにかに「つっぱり」ながらも、義理と人情という「見えないけど大切なもの」へのオマージュがある。

娯楽作品だが、その根底にはソクブン監督の世の男たちへの深い愛情と郷愁が宿っているからこそ、『トラック野郎』は時空や世代を超え、永遠の名作となったのだ。

参考出展:「権威なき権威 カントク野郎 鈴木則文」(ワイズ出版)

著者:鈴木則文/編者:小野寺勉

自身の回顧録はもちろん、映画関係者ら多数が寄稿して編まれた一冊。映画人としてどんな考えで演出、監督したのか。当時の胸中や作品に宿る思い入れがヒシヒシと伝わってくる。また監督全作品の紹介も詳細になされており、トラック野郎ファンならば必読の書であることは間違いない。

・本記事および画像は、2020年2月発行の『トラック魂 Vol.81』(交通タイムス社刊)の一部を引用・再編集したものです。

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