高速道路の防音壁はなぜ透明? 景色が見える本当の理由

高速道路の防音壁には、金属製だけでなく透明なタイプもある。透明化の主な目的は沿道住宅の日照を確保することであり、騒音を防ぎながら光を通す役割を担っている。それぞれの特徴や使い分け、最新技術を紹介する。

透明な防音壁が採用された本当の理由

高速道路を日常的に走るドライバーにとって、左右にそびえ立つ防音壁(遮音壁)はお馴染みの存在。その最大の目的は、車両のエンジン音やロードノイズといった交通騒音から沿線住民の生活環境を守ることである。基本的な構造としては、等間隔に立てられたH鋼の支柱の間に長方形のパネルを落とし込んで固定するのが一般的。かつては、金属製の箱の内部にグラスウールなどの吸音材を詰め込み、道路側の表面に細かな孔を開けた「吸音型」の不透明なパネルが主流であった。ただ、延々と続く灰色の金属壁はドライバーの視界を遮り、トンネルの中を走っているかのような圧迫感と閉塞感を与えてしまう。

そこで、アクリルやポリカーボネート樹脂を用いた「透光性防音壁(透明な防音壁)」が登場した。ただ、この透明な壁は必ずしもドライバーに周りの景色を楽しんでもらおうというのではなく、沿道住民の「日照権」確保が主な目的。都市部の高速道路が高架化されて騒音基準を満たすために壁を高くしていくと、それに比例して隣接する住宅には影が落ちて日差しが遮られてしまう。そこで、光を通す透明な素材を採用して日照問題を解決しつつ、交通騒音を防ぐという方法が採用されたのである。結果としてドライバー側にとっても視界が大きく開け、とくに視点の高いトラックドライバーにとっては閉鎖的な空間から解放されて周囲の景色や天候を感じやすくなるという、副次的な恩恵をもたらすことになったのだ。

透明と不透明の防音壁は何が違う?

透明タイプ最大のメリットは、「採光性」と「景観・開放感」である。沿道の日差しを確保するだけでなく、周囲の景色が見えることで長距離を走るドライバーの心理的負担や疲労感を軽減する効果も大きい。一方、デメリットとしては「吸音性能の欠如」と「メンテナンスの手間」が挙げられよう。従来の金属製パネルが音を内部で吸収して減衰させるのに対し、透明パネルは音を反射させる「遮音」が基本となる。そのため、反対車線や周囲の高層ビルに騒音を反射させてしまうケースがある。また、クルマの排気ガスや巻き上げる砂埃などで汚れると透明度が下がるため、定期的な高圧洗浄などの清掃が欠かせない点も課題といえる。

コストの面で比較すると、透光性防音壁は従来の金属製防音壁よりも初期費用が高価になる傾向がある。高強度なポリカーボネートやアクリルといった材料費そのものが高いことに加え、野鳥が空と錯覚して激突するバードストライクを防ぐための特殊なストライプ模様の加工や、紫外線による経年劣化(黄変)を防ぐコーティング技術が必要になるためである。さらに、設置後の清掃などといった維持管理の費用も割高となる。したがって、NEXCOなどの道路管理者は日照の確保が必須となる住宅密集地や、景観への配慮が求められる橋梁部などに限定して高価な透明タイプを採用し、それ以外の場所ではコストパフォーマンスと吸音性に優れる金属製の不透明タイプを、使用するという合理的な使い分けを行っているのだ。

壁を高くせずに騒音を減らす最新技術

現在、防音壁はただ音を防ぐだけの巨大な壁から、環境や景観と調和する機能的な設備へと進化しつつある。コストの問題はあるものの、近年では透明樹脂パネルの内部に特殊な構造を持たせたり微細な孔を空けたりすることで、透明でありながら音を吸収する「透光性吸音パネル」などが開発されている。また、防音壁に植物を這わせる「グリーンウォール」も注目されており、都市の生態系を保護しながらドライバーや周囲の住民に、視覚的な安らぎを提供する取り組みも始まっている。

壁を高くし続けることへの代替案として、現在主流になりつつあるのが「先端改良型遮音壁」である。これは、既存の防音壁の最上部に、円筒形やマッシュルーム型などの特殊な形状をした吸音装置(減音装置)を取り付けるもの。音は壁を越えようとする際に壁の頂部で回折(回り込み)を起こすが、この装置はそのエッジ部分で発生する音のエネルギーを空力音響学の理論を用いて効果的に抑制する。これにより、壁の高さを変えずに壁そのものを1m〜2m高くしたのと同じ防音効果が期待できる。今後は壁をむやみに高くするのではなく、こうしたスマートな手法が高速道路の静寂を守る主力となっていくことになるだろう。

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