トラックのボディにプロジェクションマッピング…そんなことできるの!?

マンガやアニメの流行で「2次元」が注目されているなか、話題を集めているのがプロジェクションマッピングだ。2次元映像といえば、スクリーンや液晶画面などといった平面に映すものと考えがちだが、これは都庁ビルのような複雑な壁面にも歪むことなく映写ができる。新たなエンターテインメントの表現方法として、様々な分野での利用が期待されている技術なのだ。

近年になって急激に注目度が上がってきているため、比較的新しい技術のように思われている。しかし、実際には半世紀以上前からエンタメの雄であるディズニーランドなどで、実用化が開始されていたのだ。2000年頃には、アーティストがコンサートの演出として使用することも多くなり、一般に広く知られるようになったといわれている。

投射原理はそれほど複雑ではなく、映画のように映写装置からスクリーンに投射するという手法を用いる。高輝度プロジェクターなどの機器開発が進み、明るい場所でもより鮮明な画像が映し出されるようになった。複雑な壁面への投射は、そのズレや歪みをコンピュータで計算して補正をすることで、違和感のない画像を作り上げることができる。とはいえ、映写装置はスクリーンから一定の距離が必要であるために、車輌のような動態に投影するのは難しいとされていた。

ところが、2025年1月に東京ビッグサイトで開催された「オートモーティブワールド2025」において、画期的な装置が展示されたのである。それが、日本精機の「オフセット超短焦点レーザープロジェクター」だ。この装置の投射原理はこれまでと同様だが、超短焦点なので近接したスクリーンに、歪みなく映像を映し出せるのである。たとえば車輌のボディサイドに映像を投射するのであれば、サイドミラーの下部などに映写装置を設置すればよいわけだ。

トラックは、ボディが大きい。特に箱バンなら荷台サイドや後部は大きなスクリーンのようなものだ。ここに、看板車のように自社名・連絡先・ロゴ・トレードマークなどを表示すれば、広告効果は計り知れないといえよう。路線バスやタクシーなどでは、ペイント看板やラッピングなどを使用した広告が事業化しているし、アドトラックが走っている地域もある。もし、プロジェクションマッピングトラックが実現すれば、広告効果は計り知れないといえるのではないだろうか。

しかし、残念ながらこれは直ちに実現できない事情がある。なぜならば、道路運送車輌法・保安基準の壁があるからだ。車輌用プロジェクションマッピングについて、同法を所管する国土交通省から正式な見解が公表されているわけではないが、灯火類などの規定から考えれば現段階で合法とされる可能性はほとんどない。アドトラックには大型LEDパネルで動画を流せるタイプもあるが、これを作動させた状態で公道を走るのは許されていないことからも、車輌のプロジェクションマッピングが認められないのは明らかである。

この技術は車輌外面に留まらず、キャビン内やサイドウインドーに投射することも可能だ。エンタメ性・アート性・メッセージ性など、多くの可能性を秘めている技術であるだけに、様々な利用法が考えられよう。新しい技術に法律が追い付かないのはままあることだが、適正な運用でカーライフを豊かにできる斬新な技術といえるのではないだろうか。

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