道路を走る列車、ロードトレインってなんだ?

あまりポピュラーではないが、「ロードトレイン」と呼ばれるトラックがあるという。これは決して新しい技術というわけではなく、既存のトレーラーをベースにした大量輸送車輌のことを指している。簡単にいうと、トラクタを先頭にトレーラーを複数連結したものである。いわば、鉄道貨物のトラックバージョンといったところだろうか。

着想はそれほど複雑なものではないが、実現するためには一定の条件を整えなければならない。鉄道の長大編成が可能なのは、専用軌道を使用しているからだ。ここでは、他の車輌が行き交うことはなく、列車は決められたレールの上を走行する。すなわち、長大な車輌を安全に走行するための設備が整えられているということだ。ちなみに、多くの車輌が行き交う併用軌道(路面電車など)には、長大編成が存在しない。多くは1両か2両で、長くてもせいぜい3両までである。

ロードトレインが貨物輸送で活躍しているのは、海を隔てたオーストラリアだ。この国は世界第6位の面積を持つ(日本の20倍)大陸だが、人口は約2550万人(日本の1/5)である。大きな都市は東海岸側に集中し、大陸中央部の多くは砂漠で人の住める環境にない。しかし、南部・北部・西部の一部にも都市がある。これらの都市や資源地帯と東部の間には鉄道路線があるほか、大陸中央部に広大な直線道路が走っている。

鉄道輸送が発達していない同国では、トラックによる大量の貨物輸送が必要であった。そこで、渋滞がなく走りやすい直線道路にトレーラーを複数台連結したロードトレインを走らせるようになったのである。ロードトレインは障害のない直線道路を前に向かって走る分には問題はないが、右左折や後退には相当の注意を必要とする。まして、周りに他の車輌が多い場所では運行リスクが高まる。よって、もっぱら大陸中央部や西部などに限って走行しており、人口が集中する東部では見かけることがないという。

ロードトレインは1台のトラクタ(ボルボ・スカニアのほか、ケンワースのボンネットトラックなどが多い)に、トレーラーを2台~4台(通称では、2台:ダブル、3代トリプルもしくはロードトレイン、4台:クワッドなどと呼ばれる)程度連結するので、最長では100mを超える長さになるのだそうだ。まさに、機関車に牽かれた貨物列車である。ちなみに、ギネス記録は113台を連結した1474.3m。もっとも、これはイベントとして行なわれたもので、走行距離は150m程度であったそうだ。

しかし、100m越えのクワッドでも日本では常軌を逸した長大編成。同国では整備された直線道路を、100m越えの車輌が100㎞/hで爆走するのだから、その迫力には一見の価値があるだろう。ただ、走行時の風圧はすさまじいらしく、巻き込まれる危険もあるのですれ違い時には注意が必要なのだそうだ。

日本は狭い国土に細い道が縦横無尽に走り、そこに各地で渋滞が発生するほど車輌が溢れ返っている。そういった事情に合わせて、道路交通法・道路運送車輌法・道路法などが定められているため、長大編成のロードトレインを実現するのは難しい。唯一、山口県のUBE三菱セメントの私有地にある34.94㎞の私道「宇部伊佐専用道路」では、複数連結トレーラーが走っているとのことである。

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