積みたい! だけど積めない!! これが配送のジレンマだ

街中でよく見かける軽バンの配送。どんな仕事なのかは説明するまでもないが、実際にやってみると、色々な発見がある。そして、実際に配達をやってみたら。思わぬジレンマに陥ってしまったので、ここで紹介したいと思う。

仕事の概要は、物流倉庫に行き、荷物を積んで配達する。ただこれだけだ。何も難しいことはない。強いて言うなら、荷物を積み込むのに慣れが必要だということくらいか。しかし、それも2回やれば簡単に慣れる。

今回の配達するものはパンフレット。一包みの重さを計測したら3.65㎏だった。

物流倉庫に到着し、パレットに乗せられたパンフレットも黙々と軽バンの荷台に積んでいく。1パレットに積まれているのは132包みだ。これを荷室に並べていくワケだが、ちょっと画像を見てほしい。

まあまあのボリュームに見えないだろうか? とはいえ、慣れてくれば15分ほどですべてを積み込めるのだ。

そして、積み込んだあとの光景がこちら。

意外とスカスカ。しかしこれでも軽バンには132包みが積まれている。余った空間にぎっちりと詰め込めば、この2倍、いや3倍は載せられそうだ。

しかし!! この画像のまま出発すると法律違反になってしまう。その理由がこれ。

そう、軽バンの最大積載量は350㎏なのだ! 別に関係ないじゃん、と思ったら、計算してみてほしい。1包み3.65キロ×132束=481.8㎏。はい重量オーバーです。

見た目はスカスカ、だけど実際は最大積載量よりも130㎏も重いのだからこれはアウト。

しかしこれこそが配送のジレンマ。倉庫で多く積み込んでしまえば、その分たくさんの場所に配達できる。

しかし、載せる量が少ない場合、途中で倉庫に戻ってきて、再度積み込み作業が発生してしまう。これは非常に効率が悪い。配達途中で荷物を再度積み込みに行く時間がもったいないと思ってしまったのだ。

しかし、ふと冷静に考えてみる。(これが過積載をやってしまう流れなのか!)と。

過積載が重大な事故につながった例は決して少なくない。決まった重量よりも多く積めば、多少の手間は省けるかもしれない。しかし、重くなった車体はブレーキに想定以上の負担がかかるし、どこかの重要パーツが破損してもおかしくはない。

そうしたことが起こらないように、350㎏という数値が定められているのだから、これは守って当然なのだ。

1回は1パレット分全部積み込んでみたものの、やはり法令違反は絶対にダメだ。再び荷室からオーバーした130㎏分の36包みを降ろすことにした。さらに、パレットから載せるよりも降ろすほうがしんどいことも判明した。

この作業をしているときに、プロのトラックドライバーがやってきて、倉庫に積まれたパンフレットの山を見て驚いていた。

「え? これを全部配るの? 軽バンで?」

「ええ、全部で3万5000冊を配ります」

「オレのトラックで運んでやりたいよ(笑)パンクしないようにな」

簡単な会話だったが、プロのドライバーと話せたのは嬉しい出来事だった。

最大積載量以下に戻してから配達に出発したが、やはり空の状態に比べたらはるかに重い。アクセルを踏み込まないと加速も鈍い。素人が軽バンで配送をしているだけでこれなら、長距離を走りきる大型トラックのドライバーは、さぞ神経を使うことだろうと簡単に想像できる。

物流を支える人たちには尊敬しかない。そして、筆者もそんな物流業界の端っこを手伝っている充実感に浸りながらハンドルを握る。

せめて最大積載量が500㎏あればなぁ、と思いながら。

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