運送業者の倒産件数リーマン以来の351件! 迫りくる物流の危機

2024年4月の働き方改革関連法の物流業界への本格適用により、顕著になったドライバーの低賃金や長時間労働、そしてその結果でもあるドライバーの人手不足などの「物流の2024年問題」。その2024年から1年、燃料の価格高騰などコスト増大も重なり、物流の現場を支える運送会社の収益悪化が続いている。

帝国データバンクの調査によると、2024年度の道路貨物運送業の倒産件数(負債額1000万円以上)は351件に上った。この数字は前年度より34件も多く、またリーマンショックの影響による景気の悪化でさまざまな産業にて企業の倒産が相次いだ2008年度(371件)に次いで、過去2番目という記録となってしまった。

この背景には、先にも述べた「人手不足」と「燃料の価格高騰」が大きく影響している。人手不足を要因とした倒産(人手不足倒産)は、全業種の2024年度の調査(11カ月累計)で判明した308件のうち、道路貨物運送業者は38件で全体の12.3%を占めた。また物価高を要因とする倒産(物価高倒産)は同調査で判明した841件のうち道路貨物運送業者は116件で13.8%を占め、その9割が「燃料の価格高騰」を要因としていた。

2024年7月現在の軽油の全国平均店頭価格は153.8円。年初よりは下がったものの、いまだ高値であることには変わりない。また近年の物価高により、車両のメンテナンスや買い替えなど更新にかかる費用も上がる一方で、資金繰りが悪化して倒産する会社が増えているといわれている。

また「人手不足倒産」も深刻。厚生労働省によると「自動車運転従事者」の有効求人倍率は2025年2月時点で2.71倍で、全産業の平均1.19倍を上回る。2025年3月に全日本トラック協会が発表した「物流の2024年問題対応状況調査結果」(※)によると、ドライバーの確保状況は「必要なドライバー数を確保できている」が37.9%にとどまり、およそ6割超が「不足している」という回答だったという。「仕事があってもドライバーがいないので回せない」と悩む運送会社は非常に多いというのが現状というわけだ。

その人手不足を打開するために、全国の運送会社もドライバーの賃金アップなどの対策を進めている。先述の全日本トラック協会の調査によると、2025年3月の1年以内に賃上げを行なった企業は全体の4分の3である75.8%を占めた。しかしその賃上げ率は「1〜3%未満」が最も多く35.8%となっている。

その原因は先述した燃料の高騰や物価高ももちろんだが、運送会社の重要な売上である「運賃」の低さが最も影響しているといっていい。2024年問題が明るみになってから運賃引き上げの機運が高まり、運送会社も荷主に値上げを要請するようになった。先述の全日本トラック協会の調査では、運送会社の9割以上が値上げを求め、荷主側への調査でも「値上げに応じた」との回答が9割以上に上った。

とはいえ、その運賃の上昇率は5割以上が「5〜10%未満」、次いで3割以上が「5%未満」という結果だった。

この「人手不足」「燃料高騰」「物価高」「低運賃」という状況が同じペースで進んでしまったら、2024年問題が大きく表面化するようになった2024年初頭の「2030年には輸送能力が34.1%不足する」という危機的状況が起こる試算がもっと早まってしまうかもしれない。

とはいえ、わずかではあるが運賃の上昇が進んでいるのは良い傾向かもしれない。この動きと、2025年6月に成立した「トラック新法」の施行により2024年問題がより良い方向へと解決することを期待したい。

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