
物流には必要不可欠なフォークリフトが活躍する舞台は倉庫であることがほとんど。そして、その倉庫の環境が、夏は暑くて冬は寒いというのは意外と知られていない。大きな荷物を保管するためには、大きな空間が必要になるわけだが、そこをすべて空調管理するにはそれなりの設備がなくてはならない。特にフォークリフト作業は、高温多湿な倉庫内や屋外での作業が多く、熱中症のリスクが高い為、専用の冷却システムが求められる。
そこで今回はフォークリフトのエアコン事情について説明していこう。そもそもフォークリフトは運転席や骨格がむき出しな乗り物だ。この構造を考えるとエアコンなどを装備するのが難しいように思えるが、じつはそんなことはなく、近年は省エネ性や快適性を高めた最新式キャビンや空調機能が登場しているのだ。
エアコン付きキャビン
エアコン(冷暖房)付きの密閉型キャビンを備えたフォークリフト。一般的なクルマのようなキャビンを持ち、冷房だけでなく暖房にも高い効果を発揮する。
トヨタL&F宮崎
フォークリフト専用チラー
チラーとは一定温度にコントロールされた水を循環させることで、熱源を冷却または温調する装置のことだ。これは冷却水循環装置とも呼ばれ、産業機械、医療機械、理化学機器、食品機械など、幅広い分野で使用されている。
そして、このチラーで冷やした水を冷却シートに循環させることで、暑い環境下でも快適に作業できるようにするシステムだ。


株式会社鎌倉製作所
https://coolex.jp/lineup/coolex-v151b-152/
ミストファン
ミスト(微細な霧)が気化することによって冷却された空気を、ファンによって使い運転者に送風するシステム。消費電力も少ないため、車両バッテリーへの影響もほとんどなく使用できる。
その一方で、水タンクへの補給が必要なことや、使用条件によってはミスト調整が難しく、運転者が濡れてしまうこともある。とはいえ、シンプルな構造なので汎用性がありフォークリフト以外の車両にも設置可能なのは大きなメリットだ。

ETG Japan株式会社
https://www.etg-japan.com/products/evaporative-cooler/ecv03
フォークリフト用スポットクーラー
スポットクーラーはフォークリフトのように密閉されていない環境でも効果的であることが最大のメリット。一部機種では車載バッテリーを利用でき、電源の確保が難しい場所でも運用が可能なのだ。そのため、フォークリフト作業の快適性向上や熱中症対策としてスポットクーラーの導入を検討する企業が増えている。

ピー・シー・エス株式会社
このように、一見エアコンや冷房装置を装着することが難しそうなフォークリフトにも、数多くの冷房アイテムが存在することがお分かりいただけただろう。適切な温度管理は作業者の集中力を維持しやすくなるばかりでなく、熱中症のリスクを減らし、健康障害や事故を未然に防ぐために役立つ重要なことなのだ。
特に夏場の気温が急激に高くなった日本では、今後も、現場作業の効率化や安全性の確保の観点から、フォークリフトに適した冷房装置の需要は高まり続けている。