
政府の試算によると何の対策もしなかった場合、2024年には物流の取り扱い量のうち14。2%は届けられなくなる、というのが物流2024問題の根幹であった。しかし現在のところ大きな混乱もなく、物流は機能しているように見える。
ということはトラック事業者や荷主が労働環境や運賃などを見直したり、効率アップの改善策などを施したことが功を奏したのかと言うと、そうでもないようだ。
物流コンサルタントが行ったアンケートによると、実際に改善策を立てて目標通りに達成できたと答えた企業は2%しかなかったらしい。
物流の混乱が起きていない最大の要因は荷物の取扱量が減少しているからだった。2022年をピークに2023年、24年と国内の荷物の取扱量はそれぞれ2%前後減少している。そのため、一定のルートで従来より遅延が起きているようだが、全体としてみれば従来通りのペースを維持できているようだ。
荷物の取扱量が減少しているのは、個人消費の冷え込みによるもので、日用品などの値上げによる売り上げの減少が影響しているらしい。光熱費やエネルギー、原材料費の値上げにより、あらゆるものの価格が上昇しており、消費者は従来より買い物を控えるようになってきている。
食品や日用品は生活に必要なものなので、安い商品を探すなどして購入するようにしても、その他の嗜好品や雑貨など趣味の買い物はペースを落とすことになり、結果ECサイト全体の売り上げは減少しているようだ。
少々肩透かしを食らったようでもあるが、このままで物流業界は持ち堪えられていけるのかと言えば、それはそんなに甘くないと言わざるを得ない。

物流が維持できているのは、トラックドライバーの頑張りによるものだということを忘れてはいないだろうか。相変わらず現場では人手不足であり、しかも残業時間が規制されたことによって、給料が下がり、嫌気が差しているドライバーも決して少なくない。
今回の残業規制によって手取りの収入が減ったことで、仕事に対する魅力は大きく失われている。ドライバーからは「休日よりも稼ぎが欲しい」と規制に対する恨み節さえ聞こえてくるくらいだ。
せめて以前の給料レベルを維持できるよう、基本給を引き上げるなどの待遇改善を図らなければ離職は進み、ますます人手不足に陥って、どんどん荷物の扱い能力は低下していく。このまま経済が冷え込んでいくなら障害にはならないが、それはそれで景気が悪化していくことになる。
物流の現場でも自動化無人化が進んでいる領域もある。倉庫内ではロボットによる無人化が導入の真っ最中だ。導入コストだけをみれば無人化は上昇する人件費を抑制する有効策のように思えるが、実際には導入後5、6年経過して、ロボットの入れ替えを検討する時期にならないと分からないだろう。

無人化するのが当分は難しいトラックドライバーという職種の地位を向上させなければ、やがてなり手は居なくなり、運べない状況が確実にやってくる。
かつてトラックドライバーは仕事はキツイがその分稼げる、というものであった。しかし自由化により参入が相次いで価格競争が起こってからは仕事はキツイままで給料は普通の仕事と同じ(業界平均は他の業種より安い)では、続けていける人の方が少なくなっても当然のことだ。
女性をトラックドライバーとして迎え入れてトラックドライバーという職業の注目度を上げたり、女性の地位向上なんてことを謳っている施策もあるが、待遇が悪ければ人材は集まらないし長続きしない。

誰だって生活があるのだから、当たり前のことだ。同じドライバーなら女性は人当たりがいいからタクシーに乗れば人気が出る。トラックドライバーになってもらえると思う方がどうかしている。